●羽田発着枠を狙う外資
スカイマークは国内34路線で一日176便を発着させているが、このうち羽田空港発着便を8路線74便が占めている。
「羽田発着路線は1路線で年間10~20億円の収益が上がるといわれる。しかし羽田発着枠はすでに空きがないため、新規で手に入れることはできない。羽田に拠点を持ちたい航空会社にとって、スカイマークは願ってもない買収候補先となっている」(前出関係筋)
8月にはエアアジアがスカイマークへの出資による経営権取得を検討していると一部で報じられたが、エアアジアはこれを全面的に否定している。
「デルタ航空やエアアジアの名前が挙がっている。中でもエアアジアは全日空(ANA)との提携を解消後に楽天、ノエビア、アルペンなどと出資して新会社を設立し、15年夏から日本で再び就航する予定のため、安定的な収益をもたらす羽田発着枠を狙っている。しかし航空法で外資の出資制限がある上に、国交省は羽田へのLCCの新規参入には慎重だ。スカイマーク救済策としてありうるとすれば国内大手の支援だが、日本航空(JAL)は12年の『8.10ペーパー』で事業拡大につながるような出資は国交省から制限されている。結局、ANAしか救済することは難しいのではないだろうか」(同)
●カギ握るANAと国交省
ANAは関西国際空港を拠点とするピーチや成田空港を拠点とするバニラエアなど、LCC事業にも力を入れている。エアバスからも「A320」を30機購入したエアバスにとっては“いいお客様”であるということからも、ANAが支援することになれば、違約金金額の交渉でもスカイマーク側が有利に進めることができる。
しかしANAサイドも慎重な姿勢を崩していない。
「ANAはピーチやバニラエアだけでなく、羽田―千歳を運航しているエアドゥや羽田―福岡のスターフライヤー、羽田―宮崎のスカイネットアジアに出資し、コードシェア(一つの航空便に複数の航空会社の便名を付与して運航すること)している。さらにスカイマークにまで出資して支援すると、ほとんどの国内新興航空会社を影響下に置いているとの批判を呼ぶ恐れがある。また、国交省が現在スカイマークの持つすべての路線の継続を認めるかは不明。そのため、ANAは最後まで国交省の出方を見ているのではないか」(別の業界筋)
国交省関係者は「スカイマークはまだエアバスと違約金支払いについて交渉が続いていると言っており、事態を静観している」という。
しかしスカイマークの資金繰りは、すでにかなり逼迫している可能性がある。15年3月期第1四半期の決算によると、事業費はエアバス「A330-300」の導入に伴う航空機材費、運航乗務員訓練費、整備部品費、航空機燃料費の増加などにより前年同期比229億円増となり、営業損失は55億円の営業赤字に陥っている。
「最近料金改定を発表したが、事実上の大幅な料金引き下げ。とにかく客を集めて手元資金を確保したいのではないだろうか」(前出・業界筋)
スカイマークは今、大きな決断を迫られているといえよう。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)