実はスカイマークはこの問題が表面化する前、楽天に水面下で支援を要請し、一時は楽天がスカイマークを買収することで合意寸前にまで至っていた。だが、最終的に買収交渉は決裂し、スカイマークは経営危機に立たされることになった。
スカイマークがエアバスと購入契約を締結したのは約3年半前で、当時は日本初の大型機導入で国際線に本格進出する狙いだった。その後、急速に円安が進み支払額が急増したことで、「エアバス社に契約の変更を要請した」(西久保慎一・スカイマーク社長)という。しかしこの要請を受けエアバスは、スカイマークの支払い能力を疑問視。最終的にエアバスは「契約はキャンセルされた」と判断し、巨額の違約金をスカイマークに要求するに至った。
しかし、約720億円もの巨額違約金をスカイマークが単独で支払うことは困難であり、エアバスはスカイマークに対し、大手航空会社の傘下に入り株式売却益で支払うよう求めてきたという。大手同業者に買い叩かれることを恐れたスカイマークは、楽天にスカイマークの買収を提案し、具体的な交渉に入っていた。
●最終的にはANAが支援か
楽天はインターネット上で旅行予約できる専門旅行代理店を買収するなど、旅行事業を強化している。楽天にとってスカイマーク身売りの申し出は悪い話ではなかった。
「楽天は積極的にこの話を実現すべく、スカイマークの担当者と話を詰めていき、一時はスカイマーク株の過半数を楽天が取得する方向で話がまとまった。ところが、協議の中でエアバスの違約金問題が表面化してしまった。これで楽天は一転して態度を硬化させ、スカイマークを見限って、マレーシアを拠点とする大手LCC(格安航空会社)のエアアジアの株式を33%取得する方針に切り替えた」(航空業界関係者)
楽天という“救世主”が消え去った今、スカイマークは今後、違約金の引き下げを求めてエアバスと交渉に臨む方針だという。事情に詳しい関係者は「日本への進出を目指す海外LCCなどにスカイマークが支援を求める可能性もある」と指摘している。
ただ、割安料金を掲げ1996年に航空業界へ参入したスカイマーク誕生をめぐっては、業界の競争を促すために政府が後押ししたという経緯がある。このため市場関係者の間では「最終的には全日空(ANA)が、政府の支援を条件に救いの手を差し伸べるのではないか」との観測が流れている。エアバスの違約金の強気請求も、スカイマークの背後に日本政府の救援を見越しているからではないか――ともいわれている。
(文=編集部)