LIXIL、伝統的日本企業に欧米流経営導入、なぜ“まれな”成功例に?海外事業急拡大
日本企業から外資系のトップへ転身という点では、前回連載で取り上げたベネッセホールディングス会長兼社長の原田泳幸氏と同様なキャリア・パスを歩いてきた。原田氏はアップルコンピュータ(現アップルジャパン)代表から日本マクドナルド社長へ転籍したタイミングから、稀代の個性派経営者といわれる米アップル創業者のスティーブ・ジョブズとの接触はそんなに深くないように見受けられる。
しかし、藤森氏はGEで20世紀最大の経営者と称賛高いジャック・ウェルチ元会長からの評価と薫陶を受けて育ってきた経営者だ。01年には米GE上級副社長に就任している藤森氏は、ウェルチとの体験を次のように語っている。
「十数年にわたってウェルチに鍛え上げられました。これは本当に強烈な体験でしたね。若い頃にウェルチから刺激を受けたことが、私の基本的な考え方を形成していると思います。」(11年12月14日付人事情報サイト「jin-jour」記事より)
●欧米的な企業文化を伝統的な日本企業へ持ち込み
「外資族経営者」が伝統的な日本企業に招聘されると、企業文化アレルギーを引き起こすケースが多い。異質なものが組織のトップに就くのだから当然だ。その組織アレルギーにより、筆者の場合は早々に排除されてしまったわけだ。
一方、藤森氏は果断に欧米的な企業文化をLIXILグループという伝統的な日本の大企業に持ち込んだ。同氏が振り返る。
「全体として大規模のコスト削減を行い、収益性を高めるには別なやり方をする必要があると考えた。そこで各事業会社の社長をすべて部長にし、一つの会社にした。」(13年1月18日付経営情報サイト「GLOBIS.JP」より)
これは組織改革でもあるが、藤森氏のヘゲモニー確立セレモニーともいえる。これが通れば、その後は旧来の重役たちは藤森氏に楯突くことはできない。こうしてリーダーシップを確立してから、同氏は次々と矢を放った。
「LIXILには強いブランド、強い商品があり、様々な分野で業界のNo.1、No.2のシェアを握っている。しかし残念ながら、いずれもあくまで日本国内の話だ。ジャック(・ウェルチ)は常々『世界でNo.1、No.2でなければ、クローズするか売るかだ』と言っていた。そうしたマインドを企業カルチャーとして埋め込む必要があった。ちなみにこれはいきなり断行したわけではなく、3年ぐらいをかけ、まずは執行役員の半数程度を“外様”にするところからやった。野村證券やファナック、三洋電機など異分野の人材を入れ、そのトドメとして組織形態を変え、一気に会社のカルチャーを変え、コスト構造もきれいにし、世界に打って出よう、ということで船出した」(同)
周到にして果断、このように藤森氏は伝統的な大企業を大変革して、LIXILにグローバル化の道程を歩み始めさせているのだ。このままLIXILグループを3兆円、5兆円規模の企業に育て上げれば、孫正義氏や柳井正氏などと並ぶ「平成の大経営者」の道を上り詰めていくかもしれない。創業家が存在する日本の伝統的なメーカーで、外資出身の経営者が辣腕を振るっているのは痛快だ。藤森氏の経営を刮目してみていきたい。
ちなみに、今回みてきたような藤森氏が主導するLIXILの成長は、住生活グループと称していた当時に外部から、それも外資畑の藤森氏を招聘、抜擢した元会長で創業家の潮田洋一郎氏の功績によるところが大きいが、それはまた別の機会に書きたい。
上場会社でも外部から経営者を招聘しようとして苦労している会社も多いが、次回連載ではその事例や実態を紹介したい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
※「和根洋栽」とは、「日本企業の経営トップに外資系企業出身者が就く」という意味の造語です。
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