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日立造船、造船撤退から10年、漂着した「儲かる環境ビジネス」で世界トップも視野に

文=福井晋/フリーライター
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 建設関係者は「ゴミ処理施設のEPCコンストラクション事業は、1件当たりの受注額が100億円を超えるプロジェクトが多いが、引き渡してみると赤字受注が大半」と打ち明ける。ゴミ焼却発電施設事業で収益を上げるためには、建てた後の保守・運用サービスを受注しなければならないのだが、イノバにはそのノウハウはなく、受注実績で欧州トップとはいえ業績は不安定だった。

 そこで日立造船がこれからの成長戦略に据えているのが、ゴミ処理施設事業の保守・運用サービス強化だ。同社が今年5月に発表した14―16年度の新中期経営計画では、13年度に売上高全体の42%(1395億円)だった保守・運用サービスの売上高比率を、16年度に50%(2000億円)まで高める目標を掲げている。それにより環境ビジネス(環境・プラント事業)の営業利益率も4.8%から6.3%へと、1.5ポイント改善する計画だ。また、欧州でも保守・運用サービスを展開できるようになれば、「16年度にイノバの営業利益を30億円程度まで引き上げられる」(日立造船関係者)と見込んでいる。地味な事業ながら保守・運用サービス事業で小さな利益を積み重ね、それを土台に「世界トップのゴミ処理施設エンジニアリング会社を目指す」(同)。これが、同社が描く成長戦略である。

 証券アナリストも「10年以上も追い風が吹き続きながら、ちっとも儲からないのが環境ビジネス。その中で保守・運用サービス込みで攻勢をかけている日立造船のゴミ処理施設事業は『儲かる環境ビジネス』に最も近い位置にいる」と評価する。4半期程度の赤字決算では、投資家が見限らないゆえんともいえる。
(文=福井晋/フリーライター)

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