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中沢光昭「路地裏の経営雑学」(10月22日)

注目の外部招聘経営者、なぜ“難しい”?改革を阻む複雑な事情 好業績企業ほど必要?

文=中沢光昭/経営コンサルタント

 例えば、8月2日付「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)記事は、サンリオ創業オーナー社長が次期社長に見据えていた長男の副社長が急逝し、ライセンス事業へのシフトによって危機を乗り越えた実績のある常務が社長になることが順当であるものの、やはりオーナーは親族に継がせたいと思い始めたという内側を紹介しています。真相は定かではありませんが、経営者として、人間として揺れ動く模様を象徴しているように思えます。

 著者もかつて、求人内容のミッションに「リストラの完遂ができる人材」と記載された外部経営者募集の最終選考まで残ったことがありましたが、最後にオーナー社長が「この人間が来たら、本当にリストラをきっちりやってしまう。それはしのびない」と言って見送られ、妙に納得してしまった記憶があります。

 招聘された経営者が、オーナーをも絶妙に御すような人間力を有していたり、抜群にオーナーとの相性が合う人物であれば何も問題は起こりませんが、その見極めには少々時間を要するものです。

●社員と同じ方向を向けるか

 資本主義社会では、株式の過半数を持っているオーナーと経営者が対立してしまった場合には、仮に過去・今後の取り組みが正しかろうとも、経営者に勝ち目はありません。ただし、社員全員が経営者の味方になっている状態であれば、資本の論理に勝る流れが起こる可能性があります。なぜなら、オーナーとしても社員全員がいなくなってしまったら元も子もないからです。

 しかし優良企業であるほど、落下傘的にやってきた外部招聘経営者が本質的な課題や将来のあるべき姿を示そうとも、受け取る社員の側は「言っていることはたぶん正しいのでしょうが、今のままでそんなに問題なのですか?」という冷めた反応をしがちになります。中期的な未来を見据えて危機感を持つ社員は、当然ながら会社が安泰な時間が長いほどまれな存在になっています。これは能力の優劣などとはまったく関係なく発生する状態です。

 こうした雰囲気の中で社員をドライブするのは、最終的には本質的に正しい戦略方針、評価と報酬の制度設計、継続的な対話と覚悟があれば切り抜けられるものです。ただし相当に骨が折れますし、どこかで間違えると労働紛争めいたものが発生したり、反感を覚えてオーナーや前経営者などを焚きつけて退任を画策しようという人が出てきたりするリスクを抱えながら試行錯誤を繰り返さなければなりません。

 このようにステークホルダーをまとめることが成否の大きな鍵となってくると考えられます。そしてもしそれに成功すれば、すでに業績の良い企業なので、外部要因の障壁が大きくなければ容易に業績をさらに上向かせることができます。

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

企業再生コンサルタント兼プロ経営者。
東京大学大学院工学研究科を修了後、経営コンサルティング会社、投資ファンドで落下傘経営者としての企業再生に従事したのち、上場企業子会社代表を経て独立。雇われ経営者としてのべ15期以上全うし、業績を悪化させたのは1期のみ。
事業承継問題を抱えた事業会社を譲受け保有しつつ、企業再生とM&Aをメインとしたコンサルティングおよび課題内容・必要に応じて半常勤による直接運営・雇われ経営者も行う。シードステージのベンチャー企業への出資も行う。
株式会社リヴァイタライゼーション 代表・中沢光昭のプロフィール

Twitter:@mitsu_nakazawa

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