注目の外部招聘経営者、なぜ“難しい”?改革を阻む複雑な事情 好業績企業ほど必要?
●最も外部招聘が必要な企業には現れない
オーナー色が強い企業は、外部招聘した経営者と一枚岩になれずに空中分解したとしても、ただちに経営が傾くことはありません。オーナーにはやはり純然たる愛情が根底にあるため、会社に決定的な打撃を与えるようなことはしないためです。例えば、雪国まいたけは13年に創業者である大平喜信氏が不正経理発覚の責任を取り社長を退任した後、14年の株主総会で実質的な大株主である創業家が突然、全取締役を入れ替えるという事態が発生しました。前代未聞の出来事により経営が混乱し、いまだに落ち着く気配が見えないものの、同社商品は相変わらず店頭に並んでいます。
厄介なのは、オーナー色が弱いために、サラリーマン組織を生き抜いて権力を握った人が長い間君臨している会社です。親会社でサラリーマン闘争を続けて、敗れて子会社に降ってきた人が社長をしている子会社のパターンも含まれます。会社やグループに思い入れはあったとしても、根本的な愛情は長い年月の末に忘れ去られ、内向き思考が常態化しているために、真摯に市場と戦う癖がなくなってしまっている人が社長をしている状況です。自分を継ぐリーダーがいないことを口では問題視するものの、心の底ではむしろ自分の安住の地が続くことに対して心地よいと思っています。外では普通に「若い人に鍛錬の場でもあるチャンスを与えていかなければならない」など語り、その瞬間は本気で思っていたりもしますが、行動は伴いません。足掛け30~40年の出世闘争を勝ち抜いた末に手に入れたポストを、たやすく手放せるはずもありません。もちろん、それがあるべき姿かどうかということは考えもしません。
経営トップがそのような姿勢では、必然的に内部に課題が多くなっていきます。そうした企業こそ外部招聘経営者が活躍できる条件が揃っていますが、外部資本を入れなければならないほど業績が悪化するまで、そうした誘因は発生しません。融資をしている銀行が唯一その流れを生み出せるのかもしれませんが、なかなか難しいのが実情です。与信の格付けが相当低いわけでもない融資先企業の経営体制を変えるという、リスクを伴うアクションはとれないからです。
古くからある産業において、現時点では業績が良いものの経営面で多くの問題を抱えている企業は、結構な割合を占めているのではないでしょうか。こうした企業に外部招聘経営者が入ってくる機会が増えてくると、日本経済もさらに活性化するのだと思います。果たしてそうした動きが広まるのか、現在クローズアップされている外部招聘経営者の方々の活躍次第ともいえ、陰ながら応援しております。
(文=中沢光昭/経営コンサルタント)