いまだに東電擁護、原発推進に“ご熱心” 東電労組とは何者?
について報じる「週刊ダイヤモンド」
<ダイヤモンド社/5月26日号>より)
そうした中、東京電力労働組合という組織が、原発推進と自社の利益確保に奔走していることはあまり知られていない。
東電労組は1949年に結成された関東配電労働組合を前身とする。そして1951年に東電労組に改称、現在に至る。今日では、組合員数約3万2000人という規模を誇る労組として活動している。
その東電労組だが、あらゆる手を尽くして積極的に原発を推進してきたという経緯がある。
労組が政治団体?
もともと東電には、「東京電力労働組合政治連盟」なる政治団体があり、全国各地の地方議会に東電OBを議員として送り込み、さらに多額の献金を行っている。そして、この連盟は、事実上、東電労組と同一の組織である。
電力産業をめぐる癒着や天下りの実態を取材したルポ『日本を滅ぼす電力腐敗』(新人物往来社/三宅勝久)によれば、07年の統一地方選で、この連盟は16名の候補に献金しており、そのうち14名が東電OB、残る2人も東電子会社と東北電力のそれぞれのOBだった。
なぜ、東電の労組が地方議会との関係強化を進めようとするのか?
理由は簡単で、原発立地のためである。原発を新たに建設したり、すでに稼働している原発を維持するためには、地元自治体の了解が不可欠である。全国各地の議会に東電の意にかなう議員が議席を持っていれば、好都合であることはいうまでもない。
こうした政治的工作をはじめとして、東電労組は原発推進のために長年にわたって活動を続けてきた。
いまだに原発推進に余念がない労組
だが、3.11以降、原発に対して世間の見方は一変した。それを受け東電労組は脱原発を打ち出したかというと、そんなことはない。例えば、電力総連機関紙「つばさ」(2011年10月7日号)で、同総連会長で東電労組出身の種岡成一氏は、「原子力は電力供給のためには必要な電源であると認識しています」と発言。同様の発言は東電労組関係者からも多数行われている。東電労組は、相変わらず原発を「次世代のエネルギー」の代表であるとして、擁護し続けているのだ。
以前のように、あからさまに原発推進を派手に喧伝するわけにはいかなくなっている中、東電労組は、東電という組織と利権の擁護に余念がない。
例えば、東電労組の機関紙「同志の礎」(2012年4月15日号)には、「エネルギー政策議論の動向に迫る」と題して、電力自由化や発送電分離についての記事が掲載されている。その内容は、ヨーロッパにおける電力自由化や送電分離の状況を引用し、その影響について解説するというものなのだが、結論として強調されているのは「発送電分離をしても、電気料金が下がるとは限らない」という点である。