札幌(新千歳空港)、福岡路線の開設に続き、関空-長崎、関空-鹿児島線を飛ばすほか、5月には国際線への参入も予定している。マレーシアのLCC・エアアジアと共同で設立したエアアジア・ジャパンも、8月1日に成田国際空港を拠点に就航する。持ち株会社への移行は、ANA本体とLCC2社の運営を効率的に進めるための措置だ。グループとしての経営方針の決定は持ち株会社が行い、業務の執行はANA、LCCの各事業会社に委譲することで経営力の強化を図る。
ここで注目されるのがトップ人事だ。現在のANA社長・伊東信一郎(61)は09年4月に就任。同社の2期4年で社長交代という慣例からすると、本来なら13年4月で交代する。しかし、持ち株会社への移行と重なるため、伊東氏が持ち株会社の社長に横滑りする案が検討されている。伊東氏は「2~3年でアジアの空白地を埋めていく」として、日系企業が多く進出しているインドやベトナム、マレーシアなどにLCCの新規路線を開設する考えだ。
「ポスト伊東」の大本命と目されていたのは片野坂真哉・常務取締役執行役員(56)。東京大学法学部卒で、79年入社組の出世頭。本流の経営企画畑を歩き、次期社長の登竜門といわれる人事部長を経験済み。伊東氏の下で営業推進本部長を務め、管理部門だけでなく営業も経験してきたオールラウンドプレーヤーだ。
ANAは社長候補を早くから絞り込み、帝王学を学ばせる。01年から05年まで社長を務めた大橋洋治氏(72)は「オレの次は山元(峯生・前社長、故人)、その次は伊東(信一郎・現社長)に決まっている」と周囲に話していたという。過去の例に従えば、大橋-山元-伊東氏の次は、彼より5歳下の片野坂氏が順当に昇格することになる。しかし、持ち株会社の社長に伊東氏が横滑りして長期政権となれば、経営全般は伊東社長がみることになり、事業会社・ANAの社長には現場出身者がいいのではないか、という話になってくるかもしれない。そうすれば、片野坂氏の昇格はお預けだ。