タカタ製エアバッグの国内でのリコール対象台数は319万台(12月12日現在)に上り、トヨタ自動車に続き、本田技研工業(ホンダ)、日産自動車、三菱自動車も予防措置としてリコールを国土交通省に届け出た。ホンダは全米で行う調査リコール対象台数が540万台となると発表しており、12日にはマツダも追随した。ホンダの全世界でのリコール対象台数は1340万台以上に膨らむ見通し。米クライスラーはリコール対策地域を拡大し、対象車を約62万台とした。日米欧全メーカーの対象台数は3000万台を超える可能性が指摘されており、空前の規模となる。
一方、タカタの動きは鈍い。「タカタの対応には深く失望した」。3日に行われた米下院公聴会で、米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)のデビッド・フリードマン局長代理はこう述べた。NHTSAはエアバッグの地域限定リコールを全米に広げるようにタカタへ要請していたが、この日に至るまでタカタは要請に応えなかったからだ。前日にタカタから届いた書簡には「リコールは自動車メーカーがすべきだ」と書かれていた。
3日の公聴会で、タカタの品質保証本部シニアバイスプレジデントの清水博氏が証言したが、「データに基づけば、(地域限定リコールを実施している)多湿地域での部品の交換を優先することが最善だと考える」と、リコールの全米拡大に消極的な姿勢を示した。タカタは「部品メーカーである当社は、リコールの是非を判断する立場にない」と弁護士のアドバイス通り原則論を貫いたが、この発言はNHTSAの要請を事実上拒否したことになり、事態はさらに悪化した。
公聴会にタカタの代表として出席した清水氏は取締役ですらなく、問題発覚以降、経営トップである高田重久・会長兼最高経営責任者(CEO)とステファン・ストッカー社長兼最高執行責任者(COO)が表舞台に一切姿を見せないことに批判が集まっている。経営トップが自らの言葉で説明することを拒否していると受け取られ、内向きの経営体質がリコール問題を拡大させ、米国上下院で糾弾される種をまいたとされる。タカタのエアバッグを採用した日本車に対する不買運動が起こる懸念も出ている。
●典型的な同族会社
タカタは1933年、高田武三氏が滋賀県彦根市で織物製造の高田工場を創業したのが始まり。56年に法人化され、60年にシートベルトの製造を開始した。エアバッグの製造に乗り出したのは、74年に2代目社長へ就任した高田重一郎氏だった。