「月刊情報誌『FACTA』(ファクタ出版/7月号)に、韓国情報機関がLINEを傍受しているとの記事が掲載されました。森川氏は、記事の内容は事実無根だと反論しましたが、この報道と同時期に流行ったLINEのアカウント乗っ取り詐欺の影響もあり、年内に予定していた株式上場を見送らざるを得なくなったのです」
LINEは7月、東京証券取引所に上場申請を行うとともに、米ニューヨーク証券取引所への上場も準備していた。しかし森川氏は11月、「投資家が安定して投資したいと思えるようなかたちにした段階で公開したい」と上場を断念し、LINEを取り巻く環境の悪化を暗に吐露することとなったのだ。時価総額1兆円超といわれる今年最大規模の上場劇と、前述した傍受報道にはどんな関係があったのだろうか。
「そもそもLINEは、韓国最大のポータルサイトを運営するNAVERの子会社である日本法人です。NAVERは7〜9月期の売り上げが前年同期比22%増とその成長を続けていますが、これは前年同期比57%増という急成長を続けたLINEが押し上げたものでした。しかし、そんな看板事業が日本で企画・開発された日本ブランドで、世界展開を目指していることをよく思わない本社筋の人間がいるようです。LINEに対するNAVERの支配力を強めて、韓国ブランドを押し出したい関係者が傍受説をリークしたともいわれています。そうした本社筋が、森川氏に上場断念の責任を取って詰腹を切らせたというのです」(前出・A氏)
●傍受説の真偽
では、果たして本当に韓国情報機関による傍受は行われていたのだろうか? 事情を知る政府関係者は、これを真っ向から否定する。
「『FACTA』が掲載した内閣情報セキュリティセンター(NISC)と韓国サイバー関係者との会合があったのは事実ですが、韓国側から『国家情報院がLINEを傍受している』といった話は聞いたことはありません。
そもそも、傍受したデータを情報として活用するためには、個人のIDを特定する必要があります。外務大臣などのIDが特定できれば傍受する意味もあるでしょうが、IDの特定自体が極めて困難ですし、ましてや重要人物がLINEで機密事項をやり取りすることはありません。ビッグデータというのは、情報を集めることよりも、その集めた情報を加工することのほうが難しいのです。まあ、日本で勤務する韓国大使館員自身が『便利だ』とLINEを使っているのですから、傍受などあり得ないでしょう」
もはや国民的な通信インフラとなったLINE。国民生活を支える企業として、まずは一連の疑惑について説明責任があるのではないか。森川氏には、現在のステージをクリアにしてから次に進んでいただきたいものだ。
(文=山野一十)