10月に国立の静岡大学法科大学院が来年度からの募集停止・閉鎖を決定したが、大きく報じられることもないのは、それほど法科大学院の閉鎖が珍しいことではなくなったためであろう。静岡大を含めて現在までの法科大学院の募集停止・閉鎖は22校(国立6、私立16)に及び、ピーク時に74校を数えた法科大学院のうち約3割が姿を消したことになる。
発足からわずか10年で、なぜここまでの惨状に陥ったのか。資格専門学校の講師は「乱立の容認が一番の原因」と指摘する。
「大学のブランドを高めるために、旧司法試験や国家公務員1種(現総合職)試験など難関資格に実績のない大学までが設立に走った。そして、文科省をはじめ監督すべき当局が黙認したために供給過剰になった」
実際、設立に動いた中堅私大関係者は「法科大学院は大学にとって大きな箔づけになる」と語っていた。制度導入当初の認識の甘さが、その後の大きな問題を生んだことは間違いあるまい。
●合格者数増加の計画も大幅に下回る
批判されるのは行政や大学ばかりではない。法科大学院の設立構想が動き出した02年、政府は新司法試験合格者を10年には3000人にするとしていたが、過去最多の合格者を出した12年でさえ合格者は2012人と計画の7割程度にとどまっている。法科大学院の3割が淘汰された現状を考えると、志願者に過大な期待を与えた、なんとも罪つくりな大風呂敷だった。
さらに問題なのは、法科大学院の淘汰が現在進行形であり、着地点がいまだ見いだせない点だろう。以下の表は各法科大学院の過去3年間の司法試験平均合格率(最終合格者数/受験者数)だが、募集停止を決めた大学院の実績を下回るところもかなり存在することがわかる。
募集停止を決めた中で最も高い合格率を上げていた新潟大は、その理由について「平成24、25年と続けて10人以上の合格者を出し、合格率も大幅に改善させたが、これらの結果が入学者の確保に結びついておりません」(同大学HPより)としている。平均合格率中位校でさえこの状況なのだから、下位校の苦境は推して知るべしだろう。
(文=島野清志/評論家)