パーク24も、トニックを同じように駆使している。同システムは全国約1万4000カ所(直営のみ、運用受託除く)の駐車場単位のみならず、車室(駐車スペース)単位でも稼働状況をリアルタイムで把握・分析できる。
これにより、需要状況に応じて駐車料金をこまめに上げ下げし、駐車場の高稼働率を確保している。また、例えば駐車場奥の車室の稼働率がいつも低ければ、駐車場中ほどの車室を潰して通路を広げ、全車室の稼働率が上がるレイアウト変更も柔軟に行っている。駐車場運営には地代、管理機器などの固定費がかかるので、稼働率が上がるほど収益力は上がる。トニック稼働以降、同社の駐車場粗利益率は約25%と、業界随一の高収益を確保している。
さらに、トニックで収集したデータを分析することで新規駐車場開発立地を探し出し、その収益予測もできる。これにより同社は、特定の地域に集中して展開する「ドミナント戦略」を実現している。半径200mを基礎商圏として駐車場を配置しており、市街地なら徒歩3~4分の範囲に同社駐車場がある計算だ。
このトニックのマーケティングツール機能をカーシェア事業にそっくり転用しているのが、黒字達成の種明かしだ。
●カーシェアも駐車場も、同じ「シェアする事業」
パーク24関係者は「カーシェアは1台の車をシェアする事業だが、時間貸し駐車場運営事業も1台の駐車スペースをシェアする事業。だから駐車場のサービス向上のために開発したさまざまな機能が、新規に始めたカーシェア事業でもそのまま使えた」と明かす。
事業展開に必要なネットワーク、カーシェア潜在需要地域の割り出し、需要予測、会員管理システム、請求・決済システム、ホームページ開設・運用など、すべてをトニックの転用で実現できたという。あとはステーションのドミナント戦略とサービス車両の充実で、潜在需要を顕在化させるだけだった。
前出関係者は「社会的には認知度の低いサービスなので、ターゲット商圏の潜在利用者に宣伝・啓蒙した上、試用してもらいメリットを実感してもらうなどの潜在需要掘り起こしに2~3年かかった」と話す。
カーシェア事業では、シェア用の車両を止めておくステーション開発・運用コストが事業黒字化のネックになっている。だが、パーク24の場合は、既存駐車場の一部をシェア用ステーションに充てている。したがって開発コストは基本的にゼロ。運用コストもステーション用に充てている車室分だけなので、他社に比べ著しく低い。前出関係者は「既存経営資源でカーシェア事業を展開できるので、コスト競争力があるのも当社の強み」だと語る。
「バス停に行けばバスに乗れるように、近くのパーク24の駐車場に行けばカーシェアができる環境整備」が同社のカーシェア事業理念だという。
一説には「カーシェア市場は16年に300億円を超え、20年には400億円突破」との予測もされている。それはさておき、「魚のいる池」を巧みに探し出すセンサーを武器に、当分の間、同社がカーシェア業界をリードし続けることだけは確実なようだ。
(文=福井晋/フリーライター)