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山田修「展望!ビジネス戦略」

任天堂、もう沈みゆくしか道はない スマホゲーム制覇戦略を採用できない構造的欠陥

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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 岩田社長の言動は「成功の復讐」的に解説することもできるが、「イノベーションのジレンマ」的には同社の組織全体に刷り込まれた「価値基準」がローエンドへの参入意思決定を阻止していると説明できる。デジタル・カメラを発明したのはコダックだったが、銀塩フィルムのトップメーカーだったコダックはデジタル・カメラに力を入れることなく倒産してしまったのと同じだ。

 このような構造の中で、任天堂が選択できる企業戦略としてはM&Aである。同社の財務諸表を見ると、現金と有価証券でなんと約9000億円も保有している。これを有効活用して、世界中のゲーム開発会社や関連するIT企業を早期に10社以上買収することだ。そして同社に統合することなく、それらの会社を活性化させてローエンド・セグメントを席巻する。人事交流は行わないほうがいい。任天堂本社の現在の「持続的イノベーション」のモメンタム(惰性)が、それらの「破壊的イノベーション」を担当すべき企業の風土を阻害してしまうからだ。

 だが、このような戦略的な打開策を任天堂は採用することができない。なぜなら、岩田社長自身が現在の同社の「価値基準」の創出者であり、専用ゲーム機ビジネスのアイコンだからだ。経営者が替わらなければ新しい戦略を選択できない典型的な事例でもある。「大きな時代の終わりは加速している」のである。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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