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岩田社長の言動は「成功の復讐」的に解説することもできるが、「イノベーションのジレンマ」的には同社の組織全体に刷り込まれた「価値基準」がローエンドへの参入意思決定を阻止していると説明できる。デジタル・カメラを発明したのはコダックだったが、銀塩フィルムのトップメーカーだったコダックはデジタル・カメラに力を入れることなく倒産してしまったのと同じだ。
このような構造の中で、任天堂が選択できる企業戦略としてはM&Aである。同社の財務諸表を見ると、現金と有価証券でなんと約9000億円も保有している。これを有効活用して、世界中のゲーム開発会社や関連するIT企業を早期に10社以上買収することだ。そして同社に統合することなく、それらの会社を活性化させてローエンド・セグメントを席巻する。人事交流は行わないほうがいい。任天堂本社の現在の「持続的イノベーション」のモメンタム(惰性)が、それらの「破壊的イノベーション」を担当すべき企業の風土を阻害してしまうからだ。
だが、このような戦略的な打開策を任天堂は採用することができない。なぜなら、岩田社長自身が現在の同社の「価値基準」の創出者であり、専用ゲーム機ビジネスのアイコンだからだ。経営者が替わらなければ新しい戦略を選択できない典型的な事例でもある。「大きな時代の終わりは加速している」のである。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
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