シャープはスマートフォン(スマホ)やタブレット端末向けの中小型液晶パネルで先行し、米アップルや中国の新興メーカー向けはシャープの独壇場だったが、ライバルの台頭により競争が激化。スマホ市場の環境変化が重なり、苦戦を強いられた。
苦戦の象徴が、中国のスマホ市場向けビジネスだ。17年度(17年4月~18年3月)にはスマホの世界シェアの4割を中国メーカーが占めるという中長期予測をもとに、シャープは営業攻勢をかけた。14年のスマホ販売台数が6112万台に上った北京小米科技(シャオミ)など、快進撃を続ける中国スマホメーカーとの取引を拡大させ、14年4~9月期には200億円の営業利益を稼いだ。15年3月期決算の下期(14年10月~15年3月)には、取引社数が上期比約2倍の15社に拡大。受注量が膨らむことで、下期の液晶事業単独の営業利益は上期比2.5倍の550億円に達するとしていた。
15年3月期上期(14年9月期)の業績説明会で、高橋興三社長は「亀山第2工場(三重県亀山市)の中小型(液晶パネルの)比率は50%を超え、収益に大きく貢献してきている」と自信をみせていたが、液晶の生産体制がスリム化したわけではなかった。
そして昨年11月以降、中国からのパネル受注が下振れし、「液晶は通期で減益」との悲観的な見通しが社内に流れた。米アップルの「iPhone 6/6 Plus」向け商戦が峠を越えた液晶パネル各社は、中国スマホ市場を14年後半の主戦場と位置づけていた。当然のことながら価格競争が激化し、価格の急激な下落に見舞われた。
●「日の丸液晶」の攻勢
シャープの中小型液晶パネルの快進撃に待ったをかけたのは、皮肉にも「日の丸液晶」だった。政府の支援で立ち上がったジャパンディスプレイ(JDI)とシャープは、中国メーカーの争奪戦を演じた。JDIはソニー、日立製作所、東芝の中小型液晶パネル事業を分離して誕生した国策メーカーで、官製ファンドの産業革新機構が2000億円を投じ、70%を出資している。このJDIが昨年末にかけて価格戦争を仕掛け、小米ら中国勢からのパネルの受注が同社に流れたことが、シャープには痛手となった。
調査会社ディスプレイサーチの調べによると、14年の中小型液晶パネルの出荷シェアは、JDI、シャープ、韓国LG電子の上位3社で50.8%を占める。中国スマホメーカーとの交渉では、価格が最優先される。シャープの主力工場である亀山第2工場は最近在庫が膨らんでいるため、同工場の生産を昨年末比4割程度減らす。過当競争に陥ったテレビ用大型パネルの二の舞いになるのを避けるためにスマホ用の中小型液晶パネルに軸足を移したが、ここでも価格競争がついて回った。