「正直言って、できたことと、できなかったことがある。掲げた目標を達成していない点は反省するが、ここまで3年間やってきて会社は良い方向に向かいつつある。改革をやり切った後に成長のフェーズに会社を持っていくのが私の最大の任務であり責任である」
平井氏はくすぶる経営責任論を否定し、「続投を事実上宣言した」(市場関係者)。
新中経で「最終年度(18年3月期)に営業利益を5000億円以上とする」との目標を掲げたが、この数字は1998年3月期にあげた5300億円以来の高い水準。ソニーは2月4日、15年3月期の連結営業損益(米国会計基準)が400億円の赤字予想から一転して200億円の黒字になると発表、業績回復への期待が高まったが、市場では「営業損益段階で400億円の赤字から200億円の黒字に上振れただけ。売上高8兆円に対する営業利益率はわずか0.25%にすぎない」(市場関係者)と冷めた見方で受け止められている。
人事では構造改革を主導している吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)が4月1日付で副社長を兼務し、もう1人の副社長にデバイスや研究開発(R&D)を担当する鈴木智行執行役EVPが昇格する。
●「脱エレキ」加速
ソニーはエレクトロニクス部門の全事業を分社化する。本体には人事や経営企画と研究開発部門だけが残り、「小さな本社でグループ経営戦略のスピードを上げる」(平井氏)。業績の長期低迷で過去の利益の蓄積である利益剰余金は08年3月期の2兆円強から、14年3月期には9402億円へと半減した。過去10年の営業赤字額が合計で3000億円以上に達したエレキ事業が足を引っ張ったという判断から、全事業の分社化に踏み出す。
「これでソニーはエレキの会社でなくなる。電子部品と映画・音楽のエンタメ事業とゲーム、そして金融・保険の会社になる」(市場関係者)
一方、今回発表された成長戦略に対しては、「耳触りはいいが具体性に欠ける」との指摘も多い。投下した資本を使ってどれだけ効率的に利益を出すかを示す投下資本利益率(ROIC)を各事業部門に導入することを明らかにしたが、ROICの数値目標は明示していない。経営責任を追及されるような数値目標は、「18年3月期の営業利益5000億円以上」「自己資本利益率(ROE)で10%以上」のみで、これらの数字を達成するのは並大抵のことではない。
新中計について評価する声もある。あるアナリストは「事業の撤退を含めた選択と集中を続け、収益を重視するという意思の表れ」と高く評価し、野村證券は投資判断を「中立」から「買い」に変更、予想株価である目標株価を従来の2300円から4000円へ上げた。