そのシャープは主力の液晶事業を分社化して、官民ファンドの産業革新機構に1000億円規模の出資を要請している。浮き沈みの大きい液晶事業を別会社化して、本体の業績への影響を安定化させる狙いがある。5月の中期経営計画策定に向けた構造改革はクライマックスを迎えるが、交渉は一筋縄ではいかなさそうだ。
●稼げる事業が何もない
「シャープの課題は、はっきりしている。液晶の浮き沈みを抑えて、いくつかの事業の柱をつくること。ただ、肝心の液晶の着地点が見えない」(メーンバンク関係者)
12年の経営危機から脱し、回復軌道に乗ったように見えたシャープだが、昨年秋以降、屋台骨だった液晶事業の採算が悪化。新たに開拓した小米(シャオミ)など中国顧客に日本勢のジャパンディスプレイ(JDI)が安値攻勢をかけたことで、苦戦を強いられている。
液晶に急ブレーキがかかったことで、テレビ事業や太陽電池事業の赤字を埋め切れなくなり、「稼げる事業が何もない」という悲劇的な状態に陥り、銀行団に抜本的な改革を求められているのが実情だ。
●プライドがアダに
焦点の液晶事業だが、シャープは前回の経営危機時に日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶事業を統合したJDIへの合流話も浮上したが、話は流れている。日本勢が消耗戦を展開する構図にJDIとの液晶事業の統合の可能性も再燃したが、シャープは単独での事業継続にこだわり続けた。
「単独路線は、あくまでも表向きの発言。JDIとの統合が選択肢としてないわけではない。ただ、シャープには『液晶はウチが一番』という自負がある。そのため、主導権を握れないかたちでの統合は考えられない」(同社関係者)
とはいえ、すでに汎用化が進み、製品差別化が難しくなった液晶事業は、技術より資本力がモノをいう世界。需要を見込んで、適切なタイミングで数千億円を注ぎ込むばくちの要素が大きい。同関係者は「経営危機に陥っても、『液晶のシャープ』のプライドは捨てられない幹部が多かった。だが、構造改革案を練るにつれ、銀行団の圧力もあり、本体からの切り出しに動かざるを得なかった」と経緯を語る。