不本意な異動や出向こそチャンス!会社が押し付けるキャリアを歩むのは危険である
エリートコースはすでに消滅?
多くの大企業では、入社時に説明を受ける人事規定に明示されているか、暗黙の了解であるかを問わず、標準的なキャリアパスが定められていることが多いです。
例えばある企業では、入社してから12年目で、最初の管理職への登用試験があります。その後も10年ごとに、さらに上級の管理職への関門があり、早い人は50代半ばで役員への道が開けてきます。昇進の仕方は部門でも濃淡があり、例えば、人事・総務部門や企画部門がエリートコースで、そこを軸にしながら主力の事業部門での経験を積み重ねながら役員への道を歩んでいく、といった暗黙の了解です。
しかし、組織が提示するキャリアパスを鵜呑みにしてはいけません。それは企業にとって都合のよい管理者を育てるための指針だからです。組織に対して従順であることを押し付けながら、高い役職への登用という幻想を抱かせるものです。
さらに21世紀に入ってからは、事業環境の変化が早くなり、他社との競争も熾烈になってきました。つまり、事業の儲けの仕組み(=ビジネスモデル)の賞味期限が短くなり、頻度高くビジネスモデルを組み立て直すことが求められるようになってきました。
言い方を変えれば、米経営学者のマイケル・ポーター(ハーバード大学経営大学院教授)が主張する「持続的な競争優位」が永続しにくくなってきました。現代はハイパーコンペティション(持続的な競争優位性が確立できない環境)の時代になり、競争優位は一時的になってきたと、米経済学者のリチャード・ダヴェニ(ダートマス大学教授)は語っています。
長く存続している企業ほど、その企業独自のビジネスモデルを持っています。それは初代の創業者が生み出したものであったり、第二の創業者が組み立て直したりしたものです。
従来のビジネスモデルが通用する環境下では、決められたことを組織の機能の中で標準手続き通りにこなしていく管理者は重要ですが、ビジネスモデルの変革期に入ると、かえってその管理者が変革に抵抗することが多いものです。
ですから、企業が変革を求められる時や、必然的にビジネスモデルの転換が差し迫っている時には、社員から管理者へというこれまでの標準的なキャリアパスは有効でなくなるのです。