確かにXperia Z4は、多くの部分で進化が見られるなど完成度が高まっており、安心して購入できる端末に仕上がっている。だがアップルが「iPhone 6/6 Plus」でディスプレイを大型化し、サムスンがGalaxy S6/S6 edgeで大胆なデザインの変更を実施するなど、フラッグシップモデルの大幅なリニューアルを実施している中、従来の路線を踏襲しているXperia Z4のインパクトは弱い。
またXperia Z4は、日本で発売することは決まっているものの、それ以外の国での発売は未定とのこと。それゆえ日本での新機種発表となったようだが、フラッグシップは年に1回発表するという方針を示しながらも、Xperia Z3の発表から半年で新機種の発表に至るというのは、やはり腑に落ちない部分がある。
キャリアの戦略が大きく影響している可能性も
ではなぜ、ソニーモバイルがXperia Z4をこのタイミングで発表するに至ったのだろうか。そこには国内キャリアの戦略が大きく影響していると考えられる。
今年の夏商戦を考えると、NTTドコモが3月に発表した、LTEで下り最大225Mbpsを実現するPREMIUM 4Gに対応するスマートフォンの登場が期待されるタイミングでもあり、KDDI(au)も今後同様の高速化を図る予定だ。すでにサムスンがGalaxy S6/S6 edgeでPREMIUM 4G対応を打ち出しているが、キャリアとしてはLTEの高速化に対応したラインナップを、より多く揃えてユーザーにアピールしたいのが本音であろう。
ソニーモバイルは高価格帯での端末販売を重視した再建策を打ち出しているが、強みを持つ欧州ではミドルクラスの販売が拡大していることから、フラッグシップモデルの販売は伸ばしにくい。それだけに、人気が高い日本市場にかける期待は大きく、キャリアの意向に沿うかたちで新機種の投入に至ったと見ることができよう。
また、ドコモがiPhone発売前の「ツートップ戦略」で、「Galaxy S4」と「Xperia A」の2機種を優遇して販売した時期から、今年で2年が経過するタイミングでもある。実は、Xperia AがGalaxy S4の倍近い販売台数を記録するなど、ツートップ戦略の恩恵を最も大きく受けたのはソニーモバイルであり、同社の成長の契機にもなっている。それだけに、2年縛りが解けるタイミングでインパクトのある新機種を提供できなければ、ユーザーが他の機種に流れてしまう可能性がある。Xperiaシリーズの潜在的な顧客を逃さないためにも、この段階で投入することが必要だったといえそうだ。
ソニーモバイルは格安スマホ市場に向けても、ソネットや楽天モバイル向けに「Xperia J」を提供しており、あらゆる手を尽くして国内での販売拡大に努めている様子を見て取ることができる。再建に向け苦しい台所事情があるのは確かだろうが、やはりユーザーがXperiaシリーズのフラッグシップに期待しているのは、新しい価値や意外性ではないだろうか。それだけに今後同社には、より腰を据えて開発されたハイエンドモデルの投入が求められるところだ。
(文=佐野正弘/ITライター)