政府は11日、「こども未来戦略会議」の会合で、少子化対策「こども未来戦略」案を示した。2026年度までに年3.6兆円の予算を追加。安定財源として、公的医療保険に上乗せして徴収する支援金で1兆円、既定予算の活用で1.5兆円、歳出削減で1.1兆円を確保する計画だ。施策面では、子どもが3人以上の多子世帯の大学授業料を25年度から無償化する事業を盛り込んだ。年内に戦略を閣議決定する。
戦略案は、6月の「こども未来戦略方針」を具体化させた内容。安定財源は28年度までの確保を目指し、それまでは特例公債を活用する。岸田文雄首相は「前例のない規模での政策強化の具体案を盛り込んでいる。来年の通常国会に必要な法案を提出し、スピード感を持って実行に移していく」と述べた。
施策面では、6月の戦略方針と比べ、高等教育支援や貧困対策などを充実させた。高等教育では、国立大は1人当たり年54万円、私大は70万円を上限に授業料を無償とする措置について、低所得世帯だけでなく多子世帯に対象を拡大。所得制限は設けず、短大や6年制の医大を含め支援する。貧困対策では、ひとり親家庭に支給している児童扶養手当に関し、第3子以降の増額と所得制限の引き上げを行う。
6月の戦略方針に示された児童手当の拡充は24年10月分からで、見直し後の初回支給は同年12月になると新たに明記。子どもが3人いても全員が高校生以下でないと適用されない「第3子以降への加算」は要件を緩和し、第1子が22歳になった年度末まで対象とする。就労要件を問わず保育所を利用できる「こども誰でも通園」を25年度に制度化する。
働き方に関しては、「産後パパ育休」を念頭に、両親とも14日以上の育休を取得した場合、給付金を25年度から「手取りで10割相当」に引き上げる。また、2歳未満の子どもを育てるために時短で働く人には賃金の10%を給付する制度も創設し、多様な働き方を支援。より多くの人が育休給付を受け取れるよう、雇用保険の適用対象となる労働時間を「週20時間以上」から「週10時間以上」に見直す。
◇こども未来戦略案の骨子
〔財源〕
一、少子化対策予算を年3.6兆円追加
一、支援金、既定予算、歳出削減で安定財源
一、支援金は1兆円、既定予算は1.5兆円、歳出削減は1.1兆円
〔施策〕
一、多子世帯の大学無償化
一、第3子以降の児童扶養手当増額
一、児童手当の多子加算の要件緩和
一、2025年度に「こども誰でも通園」制度化
一、両親の育休給付金は手取りで10割相当
一、短時間勤務で賃金の1割支給
一、週10時間以上の労働で雇用保険(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/11-21:23)