DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、日本の「デジタル赤字」が常態化している。2023年のデジタルに関連する取引の収支は、日本が海外に支払った額が9兆2463億円に上り、海外から受け取った額を5兆5360億円上回る赤字だった。クラウドやネット広告、スマホアプリなどを通して海外のデジタルサービスに接する機会が増え、比較可能な14年以降の9年で、赤字幅は約2.6倍に拡大した。
財務省が2月発表した23年の国際収支速報で、経常収支は20兆6295億円の黒字を確保した。過去最大を更新した輸出額や旅行収支、海外子会社への投資による配当などを示す第1次所得収支がプラスに寄与した一方、デジタル関連収支は下押し要因となった。
同省によると、デジタル関連収支はサービス収支のうち、(1)著作権等使用料(2)通信・コンピューター・情報サービス(3)専門・経営コンサルティングサービス―を指す。定額動画配信サービスや、メール・SNSなどクラウドを活用したサービスの利用料、ネット広告掲載費なども含まれる。今やほとんどの企業や個人が利用するサービスばかりだ。
このうち通信・コンピューター・情報サービスでは、22年の地域別国際収支によると、日本から支払った金額の約35%を米国が占めた。みずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生上席主任エコノミストは、デジタル・IT分野では「マイクロソフトやグーグルなど、シェアを持つ企業が米国に偏っている」と指摘。デジタル支出の多くが米企業にドルで支払われるため、デジタル赤字は「円安の要因の一つにはなる」(坂中氏)とされ、為替の動きにも影響を与えている可能性がある。
デジタル分野では汎用(はんよう)性の高いサービスが好まれ、米巨大ITに打ち勝つのは容易でない。少子高齢化が進み人手不足が深刻な日本では、省力化や効率化にもつながるDXの重要性がさらに高まりそうだ。このためデジタル赤字の拡大基調は当面続くとの見方が多い。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/02/28-16:22)