財務省は31日、外国為替市場で4月26日から5月29日までに計9兆7885億円の為替介入を実施したと発表した。円安が一段と加速した大型連休中の4月29日と5月2日に円相場が一時、急騰。市場では、政府・日銀が介入の有無を直ちに公表しない「覆面介入」に踏み切り、円買い・ドル売りを行ったとみられていた。介入規模は、月次公表ベースで過去最大となった。
政府・日銀による為替介入は2022年秋以来、約1年半ぶり。同年9~10月に3回にわたって行われた計9兆1881億円の円買い・ドル売り介入の規模も上回った。
今回、明らかになったのは期間中の介入額の合計。実施日別の介入額は、4~6月分をまとめて8月に公表される見通しだ。
介入後も円安基調が続く中、鈴木俊一財務相は31日の閣議後記者会見で「行き過ぎた動きには適切に対応する。こうした基本的な考えは何ら変わらない」と強調した。
日本が祝日で東京市場が休場だった4月29日、海外市場で円は1ドル=160円台まで落ち込んだ後、一転して154円台に急騰するなど、乱高下。急激な円安を阻止するため、取引が薄い時間帯を狙って5兆円規模の円買い・ドル売り介入が断続的に行われたとの観測が浮上していた。
5月2日早朝にも157円台半ばから153円台まで円が買い戻される場面があり、再び3兆円規模の介入が実施されたとの見方が広がっていた。
介入の実務を指揮する財務省の神田真人財務官はこれまで介入の有無についてコメントを控えつつ、「必要があれば適切な対応を取る」と市場をけん制してきた。これに対し、イエレン米財務長官は先週、「日常的に使われる措置ではない」と実力行使にくぎを刺したが、その後の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、為替の過度な変動は経済に悪影響を与えるとの2017年のG7声明が再確認された。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/05/31-20:31)