今年の日銀の金融政策運営は、昨年7月に続く政策金利の引き上げが焦点となる。日銀は利上げの判断に関し、春闘での賃上げ動向やトランプ次期米政権の経済政策を見極める考えを示している。今年最初に開く金融政策決定会合は今月23、24日で、20日のトランプ大統領就任直後のタイミング。年明けから利上げの是非について突っ込んだ議論となりそうだ。
「経済・物価情勢の改善が続いていけば、金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが必要だ」。植田和男日銀総裁は昨年末の講演で、段階的な利上げを模索していく考えを改めて表明。「現在のような低金利を維持し続ければ、緩和の度合いが過大となる可能性がある」と、政策変更が遅れるリスクにも言及した。
日銀は昨年3月、マイナス金利政策を解除し、10年以上にわたる大規模緩和に終止符を打った。7月には政策金利の0.25%程度への引き上げを決めた。
金融市場では昨年12月に再利上げ観測が一時浮上したものの、日銀は「春闘に向けた今後の賃金動向について、もう少し情報が必要だ」(植田総裁)として、政策変更を見送った。国内の経済・物価動向は2%の物価上昇目標の実現に向けた想定通りのシナリオをたどっている。利上げを決断する上で、植田総裁が「もうワンノッチ(1段階)欲しい」というデータや情報がいつそろうのかがカギを握る。
日銀は今月9日に冬の支店長会議を開き、全国の中小企業を含めた賃上げ状況を点検する。春闘に向け、賃上げの動きに勢いが増せば1月会合での利上げ判断を後押しする。みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは「市場での織り込みが十分進めば、日銀は1月に利上げに踏み切るだろう」と予想している。
一方で、発足直後のトランプ政権を巡る不透明感が拭い切れなければ、利上げを先送りする可能性もある。利上げに批判的な国民民主党がキャスチングボートを握る国内政局も、日銀が判断を避ける要因になり得る。
ただ、日銀が慎重姿勢を崩さなければ、円安が一段と進んで輸入インフレが再燃しかねず、結果的に早期利上げ観測が強まることも想定される。市場でも日銀の政策変更のタイミングを巡って見方が交錯している。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/01/03-15:32)