人は無意識のうちに安いものには安い理由を、高いものには高い理由を探そうとする習性があり、安い商品やサービスに対して「人件費や教育費を削っているだろう。だから接客がいまいちなんだ」などと、悪いことを探そうとする。このためにクレームにつながりやすくなる。
反対に、高い商品やサービスに対しては、よい部分を無意識に探そうとして、「技術と経験が他店よりも優れている」などと理由付けをするためにクレームにつながらないのだ。
つまり、価格が安くなればなるほど、人は悪い部分を探し、クレームをつけがちになる。現在、世間では「過剰クレーム」をつけるモンスター消費者が急増中だが、この傾向があてはまりそうだ。
このモンスター消費者を研究した『ブラック企業VSモンスター消費者』(今野晴貴・坂倉昇平/ポプラ新書)では、「お客様は神様」といった誤解された思想の下、消費者意識の高まりと、自らの言い分を発信できるITメディアを持つ時代となったことで、「過剰クレーム」をつけがちだと指摘する。モンスター消費者には、やはり安価な商品に過剰なサービスを求めようとする傾向が見られるという。
低価格が当然と勘違いしたモンスター消費者は、安価な商品にまで過剰なサービスを求める。企業側も競争を勝ち抜くために、その要求に応えようと社員の酷使を厭わなくなっていく。「お客様の立場になって考えよ」などと、客のためであるかのような大義を振りかざし、十分な人員や予算を割かずに、社員に際限のない労働をさせる。
その一例が24時間営業のスーパーだ。深夜には責任者に絡んでくるモンスター消費者も急増する。しかも、夜間責任者もクレーム対応に不慣れな場合が多く、モンスター化に拍車をかけるのだという。
つまり、価格競争が進み、サービスが過剰になるほど、客のクレームが増えてくるということのようだ。
(文=松井克明/CFP)