2大経済誌で、サントリーの特集が相次ぎ組まれている。
「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/7月12日号)は『サントリー創業116年目の決断 名門はプロ社長に頼った』、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/7月19日号)は『“やってみなはれ”世界へ 佐治サントリーの25年 凄みと死角』という特集だ。
「東洋経済」は「創業116年目を数えるサントリーが下した決断は『プロ社長』をトップに招くことだった。衝撃人事は名門企業に何をもたらすのか」と、サントリーの社長交代に焦点を当てている。
7月1日に行われた、サントリーホールディングスの社長交代の記者会見。同社の佐治信忠会長兼社長が下した決断は、創業家以外から迎える5代目社長として、外部のプロ社長をトップに招くこと。そして、それはつい最近までコンビニ業界第2位のローソン社長として辣腕を振るってきた新浪剛史氏だった。
●実績抜群な佐治家
「ダイヤモンド」によれば、これはサントリー内部でも衝撃の人事だったという。
「有力視されてきた創業家出身の鳥井信宏・サントリー食品インターナショナル社長に後を継がせるには『時期尚早』として外部からの抜てきとなった。だが、信宏氏が成長を果たすまで、とも佐治社長は言及しており、最大で10年程度のリリーフになる公算は大きい」
「ダイヤモンド」同号巻頭の信忠氏インタビューでは、信宏氏に足りないものとして「成功体験だね。彼は経営で実績をまだ出していない。これという実績を社内外に示す必要がある。例えば国内で日本コカ・コーラを抜くとか、買収したオランジーナ、ライビーナ、ベトナムなどで実績を示すとか。そうすることで新浪さんにも社内にも、そして社会にも認められるはずだ」と語っている。創業家という身内にもかかわらず、厳しい。
なお、サントリーの初代社長・鳥井信治郎氏は「赤玉ポートワインで築いた財産ほぼ全てを投じて日本初のウイスキー蒸留所を建設。その優れたブレンダーとしての才能は『大阪の鼻』として知られた」。
信治郎氏の長男は鳥井吉太郎氏だが早世し、佐治家を継いでいた次男の佐治敬三氏が2代目社長となり「『トリス』『山崎』『白州』などの中核商品を生み、ビール事業にも参入した中興の祖」となる。その敬三氏の長男が4代目で現社長の信忠氏であり、国際化、多角化に先鞭をつけ、サントリーを世界企業にまで押し上げた。
一方、「成功体験が足りない」と評された信宏氏は、吉太郎氏の孫に当たる。なお、吉太郎氏の子は3代目社長の信一郎氏だが、任期は11年と短かった。
実績は、鳥井家よりも佐治家のほうが安定しているが、「佐治信忠現社長には子供が居ない。さらに(創業者の三男・鳥井道夫氏の息子である)鳥井信吾サントリーホールディングス副社長の子供はサントリー社内に居ない」(「ダイヤモンド」より)ため、この先考えられるのは、信宏氏の子供へ創業家のバトンをつないでいくこととなる。