「料理人として活躍中に、不摂生や心労も重なり、心室細動で45分間心臓停止を起こす。この体験から食の大切さを改めて実感。一人でも多くの人に体が喜び、体に優しく、笑顔になれる料理を提供したいと農家直送の自然栽培野菜を使ったケータリングサービスを開始した」
添加物まみれの食品が氾濫し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)によるGMO(遺伝子組み換え)作物の輸入のカウントダウンが始まるなど、食をめぐる環境の激変ぶりに危機感を抱き、自らの体の変調などをきっかけに農業、自然栽培へ目覚めたのだ。農業を語る出演者たちの表情は生き生きとしている。
●遺伝子組み換え作物に席巻される?
なお、このイベントの主催者・岡本よりたか氏も自然栽培農家。岡本氏はこう語る。
「私はもともと、メディア関係で農薬の取材などをしていました。農薬問題は中国などでは非常に多く、日本の農家でも農薬中毒で亡くなる人がいました。ただし、慢性毒性のために医者の間で情報が共有されず、いろいろな病名がつけられるだけだったのです。
その後、IT系の仕事に就いたのですが体調を壊して、それをきっかけに食べ物ぐらい自分で作ろうと思い農業を始めました。そのときに農薬が体に悪いと思っていたので、農薬は最初から使わないでいこうと決めました。また肥料も環境を壊すなど疑問があったので、無農薬・無肥料で栽培することにしたのです」
現在、GMO作物の危険性も訴える岡本氏。
「GMOはさまざまな危険性が指摘されていますが、『農業支配』という危険性もあります。GMOを作るバイオテクノロジー企業は、そのタネの特許を取得していて、GMOを栽培する農家のタネ取り(自家採種)を特許違反で訴えようとします。その国のタネ業者も買収して、事実上、GMOのタネしか流通させなくするのです。
自然栽培はタネ取りが基本です。品種改良が進んでいるタネを何年かかけて原種の状態に戻します。さらに、その土地の環境(土質、気温、水、地中の微生物)に合った良いタネを作り、このタネで栽培するのです。環境を記憶したタネは肥料も農薬も不要です。根もその土に合ったようにしっかりとはりめぐらせるので、強風でも横倒しになることなく、干ばつにも強いのです。これは数十年前まで日本の農家がやってきたことですが、GMOのタネが入ってくれば、こうした自然栽培も打撃を受けかねません。その前に、できるだけ多くの人が自然栽培に目覚め、このタネを広めてほしいと考えています」
次は自然栽培で穫れた野菜を料理として提供し、自然栽培を食の面から堪能するイベントを年末に開催するべく計画中だという。
(文=松井克明/CFP)