3月にも増補改訂版が発売される予定の山口氏の著書『ディズニーランドの空間科学』(学文社)には、興味深いデータ分析がある。1つは「東京ディズニーランドの平均滞在時間とパスポート料金」の相関分析(回帰分析)であり、もう1つは、「東京ディズニーランドのアトラクション数と平均滞在時間」の相関分析(回帰分析)だ。
「平均滞在時間とパスポート料金」からは、パスポート料金が高くなればなるほど、平均滞在時間も増えているという関係が見えてくるのだ。
「掲載されているのは08年度のデータですが、最新の13年度データまで入れても、相関係数0.939の強い相関関係が認められます。それぞれの時点におけるパスポート料金はゲスト(顧客)がパーク内で楽しんでいる時間と概ねバランスが取れている関係なのです。最新(13年度)の数字を見ると、パスポート料金が6200円の際には、8.9時間の平均滞在時間でした。この関係に単純に当てはめると、6400円では9.5時間の平均滞在時間となり、6900円では10.1時間の平均滞在時間にならないといけないことになります」(同)
つまり、過去のデータから計算すると、東京ディズニーリゾートのゲストは、パスポート料金が6900円に上がった場合、10.1時間を過ごせば満足できるといえる。
アトラクション数と滞在時間の相関関係
平均滞在時間を延ばすために必要なのは、アトラクションや雰囲気の適度なにぎわい(キャパシティの最大化)だ。魅力的なアトラクションがあれば、時間が過ぎるのも忘れてしまうということを意味する。
そこで分析されたのが「東京ディズニーランドのアトラクション数と平均滞在時間」の相関関係だが、こちらも非常に強い相関関係を示している。アトラクション数が増えれば増えるほど平均滞在時間が延びていくという。
つまり、アトラクションを増やすなどのキャパシティの最大化を追求すると、平均滞在時間が延びて、パスポート料金の値上げも可能になり物販の売り上げも伸びる、というのがこれまでのオリエンタルランドの売り上げ方程式だったわけだ。ところが今回は、「パスポート料金の値上げ→売り上げの最大化」だけが最優先に考えられて、「キャパシティの最大化」が置き去りにされているのではないかという懸念があるのだ。