名門 “裏口入学”の実態とは!?「1人10万円」「やりとりは商品券」
(右)「週刊ダイヤモンド(同)
しかし、スティーブ・ジョブス亡き後、CEOに就任したティム・クック体制になって、1年。その足元でいくつかの不安が忍び寄ってきている。同特集ではその不安に迫っている。
●最強企業アップルに浮上した懸念!?
まず1つ目の不安は「部品メーカーに対し徹底的な値下げ要求をするようになった」点だ。
以前のアップルは常に製品の改善に取り組んでおり新しい技術を尊重する企業だった。品質や納期については厳しいが、「同じものをできるだけ安く作ってほしい」と迫ってくるだけのサムスン電子とはまったく異なり、その技術や知的財産を正当に取り扱うアップル企業姿勢には、日本の多くのメーカーも協力を惜しまなかった。
しかし、その姿勢はiPhone5の開発段階から変わってきた。品質レベルが劣る中国メーカー2社からも一部、部品の購入を開始。そのメーカーの価格と比較しながら厳しい値下げ要求をしてくるようになったという。新しい技術の提案をすると、かつては、価格の話はほとんどせず、こちらの要求を尊重した上で交渉するというのがアップルだったが、今では、真っ先に価格の話になるのだという。
利益率を最優先にコストダウンに邁進するようになったアップル、背景にはクラウドサービスを運営するためのデータセンター整備など、先行投資がかさんでいることもあるようだ。
2つ目の懸念は「アップルの“ファブレス経営”が曲がり角にきている」点だ。アップルがほかの電機メーカーに比べてずば抜けて高い収益力を誇る理由の一つは、生産をすべて外部の協力企業にアウトソーシングする“ファブレス経営”にあった。“ファブレス経営”では生産設備や労働者にかかるコストを固定費として抱えることがなく、自社は開発や販売といった付加価値の高い分野に注力することができる。アップルの“ファブレス経営”はまるで経営学の教科書のようなビジネスモデルだったのだ。
しかし、iPhone5が一機種で販売台数1億台に上るなどその規模が大きくなりすぎて、ほころびが目立つようになった。その象徴的な事件が、10月上旬に中国の鴻海精密工業(フォックスコン)の工場で起きた従業員数千人のストライキだ。情報発信源となった米国の労働者保護団体チャイナ・レイバー・ウォッチによると、ストはアップルがiPhone生産の品質要求を厳格化したため、労働負荷が高まったことがきっかけだという。
アップルは、パーツのつなぎ目のズレが0.02ミリメートル以下であることを要求するなど品質要求を強化。全世界200万台に上る初回予約分を早急に供給するという時間的要求もあって、工場の労働者は10月の建国記念日の連休を返上して生産に追われていたという。
労働者の爆発に対し、鴻海側は今後、アップル側に「値上げ」を求めていくという。鴻海は、アップル製品を本格的に手がけ始めた07年度からの5年間で売上げを約9兆円に倍増させたが、労務費や原材料費の高騰で、営業利益は倍増どころか逆に小幅減少しているのだという。こうした台湾の人件費高騰がアップルのビジネスモデルを揺るがし始めている。
そして3つ目の懸念は「アップルは常にイノベーションを求められている」点だ。アップルはiPhone5では電池の寿命を縮めることなく端末を20%も薄く軽量化したうえ、横幅は変えずにスクリーンを広げた。通信もLTEに対応していて、大きく進化した。500万を超える製品をわずかな時間で出荷するなど関係者から見れば驚くべきオペレーションを展開したが、結局、注目されたのは「初の純正地図アプリの地図が大コケでユーザーに謝罪した『自前主義』の限界」だった。アップルは、常にジョブス時代の完璧さとともに誰の目にもわかるようなイノベーションが求められているのだ。
慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「初めて世界販売された3Gから来年でちょうど5年になる。通信の世界は動きが激しく、5年は一つの区切りだろう。次の『iPhone6』はいったい何をしてくれるのか。ここで何もイノベーションがなければ、アップルは特別な会社ではなくなる」と語っている(『インタビュー アップルの未来は次のiPhoneが決める』)。夏野氏は4つのポイントとして、I/O(インプット・アウトプット)、AI(人工知能)、生体認証、バッテリーマネジメントをあげている。
その先にある新事業はやはりテレビになるどうか注目だ。
今回のアップルに関してはダイヤモンドも一カ月前に特集をしている。「週刊ダイヤモンド 10/6号」の特集『日本を呑みこむアップルの正体』だ。ダイヤモンドでは、アップルの下請け企業化した日本企業に迫ったものだった。アップルは、部材や工場の生産に精通したスペシャリストを取引先の工場へ監査として派遣。後日、その監査をもとに飽くなきコストカットを求めてくるえげつなさを紹介していた。今回の東洋経済は経営学的なアプローチでアップルに迫ったものだった。
●慶應義塾に花まる教育会、応募が殺到する私塾
「週刊ダイヤモンド 11/3号」の特集は『モトがとれる学校・塾・習い事』だ。どの学校に入れば幸せな人生が送れるか。どんな習い事をすれば将来役に立つか。小学校“お受験”対策から大学入学支援まで、子どものための投資をさまざまな面から分析していく特集だ。ダイヤモンドの分析では、有力大学を卒業すれば有力企業への就職率が高まり、生涯賃金は平均賃金労働者よりも相当に高い額になる可能性が高まることが明らかになった。「いい学校(近年では中学受験で中高一貫校)に入学して、いい大学・大企業に入って安定した生活を送ってほしい。そのための出資は惜しまない」という親心は間違ってはいないのだ。
しかし、親が教育投資に求めるのは学歴や高い生涯賃金だけではない。人間としての成長も重要なポイントだろう。今回の特集では「生きる力」の育成についても検討したものだ。
ざっと一読して今回の特集のポイントは2つ。慶應横浜初等部の開校と、有力塾の台頭だ。
慶應横浜初等部の開校とは、来春、東急田園都市線江田駅徒歩10分(住所は青葉区あざみ野南)に開校される慶應の小学校だ。第一期生募集のために8月と9月に開催された説明会では定員108人に対し、3000人強が集まった。お受験業界で不動のナンバーワンブランド付属小「幼稚舎」を持つ慶應が、富裕層の多い横浜で小中一貫校を開設するとあって大注目となったのだ。なお、念のため、「慶應幼稚舎」は小学校であって、幼稚園ではない。ときどき話がかみ合わない人がいるので、再確認しておきたい。
説明会で配布された資料は、慶應幼稚舎では6年間クラス替えがないのに対し、横浜初等部では2年に1回クラス替えを行ない、保護者が慶應義塾出身かどうかは入試では考慮しないといった説明が明記されていたという。輝かしい慶應幼稚舎ブランドとは別の意味合いの小学校になりそうだという。
一方、有力塾の台頭とは、最近テレビで話題の「花まる学習会」のことだ。「花まる学習会」とは、大学受験のための予備校で指導していた現代表が、解き方を教えてそれを繰り返すだけの機械的な計算力指導一辺倒の既存の塾へのアンチテーゼとして、「思考力」「作文」を指導の中心に据えた学習会を93年に立ち上げた。掲げる目標は「魅力的な大人、メシが食える人」を育てること、現在は埼玉県を中心に首都圏に全173教室、1万人以上の生徒を抱える。評判が評判を呼んで入塾のキャンセル待ちは3000人にいたり、現在はキャンセル待ちすら受付られない状況だ。
あるとき、代表は既存の塾で教えている際にあることに気がついた。同じように教えてもすぐに吸収できる子と吸収できない子がいる。すぐに吸収できる子は実は「遊びこんだ経験」があったのだ。遊びこんだ経験が、後の思考力や人間的魅力につながるとして、毎月のように1泊2日の野外体験イベント、夏には2泊3日のサマースクールで徹底的に遊ぶ。何もない自然を舞台に創造力を発揮して遊んでこそ、知性や人間的魅力が育つという考えは、普段の塾の場でも思考力を重視する教育につながっているのだ。
さらに「花まる学習会」の特徴は、思考力と野外体験、そして「親教育」も重視している点だ。子どもが問題を起こす原因は子ども自身ではなく、親にあるのではないかという問題意識を出発点に、家庭での子どもの接し方や心構え、夫婦関係の構築の仕方までを説いている。この無料の講演会は、毎年100回ほど開講しているが、数百人の定員に1000人以上の応募が殺到するのだという。
そして、今回の特集でいちばんの衝撃記事は『名門への“裏口入学”そのために必要な本当の金額』だ。最近、中央大学横浜山手中学(横浜市中区)が入学選抜試験で、合格ラインに満たなかった中央大理事長の知人の孫を不正に合格させていた口利き事件が発覚し、その後、理事長が解任された一件が記憶に新しい。今回、ダイヤモンドでは裏口入学の実態について、ある仲介者に絶対匿名を条件にインタビューを敢行したのだという。
この仲介者によると、実際に、裏口入学で学校側幹部や関係者が受け取るのはせいぜい1人10万円程度、場合によって料亭での接待があったとしても、「裏口入学にかかる合計金額は10万~30万円、どんなに費やしても100万円程度」だという。実際のやりとりは商品券にて行なわれるという話はリアルだ。
また、それ以上にお金がかかるものの、合格するためのとある秘策も伝授。超名門の私立中学に合格させる場合、この私立中学の先生に家庭教師をお願いするのだという。つまり、問題を作成する側に勉強を教わり、間接的に出題範囲がそれとなくわかるという方法をとるのだという。このときの家庭教師代は「1時間2万円」だという。
この仲介者から裏口入学に関するアドバイスは、「カネ以上に重要なのは受験生と両親の人柄です。特に幼稚園や小学校の入試では、学校側は親の面接を最重視する」ので要注意。また、志望校を一校に絞らないほうがいい。「学校にこだわりすぎると口先だけの詐欺師に騙される可能性」が高まり、数千万円をボラれるおそれがあるのだという。
結局、子どもへの投資は、親のカネとアタマしだい、ということになりそうだ。
(松井克明/CFP)