しかし文春の場合、「一行の裏取り」(=事実関係を明らかにする)のために莫大な時間とお金をかける、というポリシーが確立している。ひとつのネタに対して複数名の取材チームが編成され、必要であればデスクの許可を取る必要もなく、沖縄でも北海道でも経費で出張することができるのだ。
そして、時間とお金をかけて検証した結果、仮に「この情報は真実ではない」と判明したとしても、お咎めはなし。これが他社であれば、「そんなに経費をかけたのだから、何かしら記事にしろ」という雰囲気になるのだが、文春の場合は「記事にならなかったけど、真実がわかったのだから、それで良しとしようという空気」(X氏)なのだという。
「ちなみに昨年度は、年間8ケタの取材経費を使った記者が複数いましたよ。でも、彼らはそれなりの結果を出していたため、上層部から呼びだされはしたものの、苦笑されただけでした」(X氏)
(2)「カネ目的」のタレコミは相手にしない
文春は取材経費が潤沢なことから、いわゆる情報の「タレコミ」に対しても高額な見返りを支払っているように認識されがちだが、事実ではない。「金目的の証言は信憑性に欠ける」というスタンスで取り扱っており、通常の特集記事の取材謝礼は数万円程度なのだ。
「文春は、ASKA事件のときでも情報提供者にお金を払ってません。別の某雑誌のほうがよほど払ってますよ。ある事件のときにインタビューした証人や、有名人の写真に対して数百万円払っていました」(X氏)
その文春もベッキー不倫と甘利元大臣の金銭授受報道によってタレコミが急激に増えたようで、今や女子中学生からもタレコミのメールが来ているという。
(3)芸能事務所が交渉できない
文春が芸能系のスクープに強いのは、芸能事務所が交渉できないからだ。
ほかの大手出版社であれば、週刊誌以外にもファッション誌や情報誌などを出版しているため、「そこにウチのタレントを出させない」「ほかのタレントのこんな情報を提供するので、今回の件は報道しないでほしい」などと交渉することで、スキャンダル記事を表に出させないように取引ができる。しかし、文春はそのような交渉には応じない姿勢を貫いている。
また発行元の文藝春秋は文芸誌中心の出版社であるため、他雑誌の出演バーターができず、事務所としては「交渉が難しい相手」との認識をされているのだ。