“キム兄”ことお笑い芸人の木村祐一が、ベテランから若手まで107組の芸人にインタビューしたドキュメンタリー作品『ワレワレハワラワレタイ ウケたら、うれしい。それだけや。』が、現在東京で公開中だ。芸人の生き様や葛藤に肉薄し、「生まれ変わっても、あなたは芸人やりますか」と問う木村を突き動かしたのは、なんだったのか。強面の細い目にたたえる芸人愛について存分に語ってもらった。
――木村さんはインタビューアーも務めましたが、きっかけはなんだったのですか。
木村祐一(以下、木村) 芸人というのは繊細というか、本当にかわいらしい生き物なんですよ。「いつも見ているよ」とちょっと言われただけで、飛び上がるほどうれしかったり、逆に心ない一言に傷ついたり。それをぜひ知ってもらいたかったのです。
2012年の吉本興業創業100周年特別公演『伝説の一日』の打ち上げの席で、明石家さんまさんが音頭を取って、みんなで桂文枝師匠のネタ「いらっしゃ~い」をやりながら写真を撮ったのですが、その時に本当にみんな幸せそうな顔をしていたんですよね。僕もこれまで芸人をしてきて、裏では不満や怒りを覚える瞬間もあったけど、「こういう仕事ができて、ほんまよかった」と心の奥底から喜びを感じた。でも、「みんなはどうなんやろ? 1組ずつ聞いてみたいな」と思ったのが、今回のきっかけでした。
――若手だけでなく、笑福亭仁鶴師匠やダウンタウンさんなど、そうそうたる顔ぶれです。
木村 笑福亭松之助師匠、文枝師匠、さんまさん、ナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号、しずる、はんにゃ、渡辺直美などほかにもいっぱいいます。ベテランから若手まで1組1時間以上インタビューしました。みんな有名な人たちばかりですが、売れるのと引き換えといいますか、苦労もあるんです。
「アホの坂田」でお馴染みの坂田利夫師匠は、レストランで母親とご飯を食べていたら、高校生が「アホがおるぞ」と騒ぎだしたことがあり、その時に母親が立ち上がって、「うちの子はアホと違います! 仕事です!」と顔を真っ赤にして言い返されたそうです。「親には悪いことをした」と言っていました。芸人には、そういう苦労があることもわかってもらいたい。若手だと、「前説に行った先で、『ここで弁当を食べろ』と言われたのに、別の人から『どこで食べてるんじゃ、ボケ! もっと隅っこに行け』と言われたのが悔しかったから、がんばろうと思った」という芸人もいました。