柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第17回が4月30日に放送され、平均視聴率は自己ワーストの11.0%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。相次ぐ新キャラの登場や、次々に訪れるピンチを直虎が切り抜けていく展開で「おもしろくなってきた」と評されているが、重厚感のなさが視聴者離れに結びついているのかもしれない。
今回は、中野直之(矢本悠馬)が取り寄せた火縄銃「種子島」をめぐる話と、後に井伊直政として戦国に名をはせる虎松(寺田心)の成長を描く話の2つが並行して進む展開となった。直虎(柴咲コウ)は戦における種子島の有用性を認め、領内にある鍛冶の村で量産しようと考える。だが、試作途中で政次(高橋一生)に見つかり、銃の密造は今川への謀反とみなされる行為であり、助けてほしければ自ら虎松の後見を降りるようにと迫られる。
一方、虎松については、家臣の息子たちに五目並べで負けたのがショックで「不登校」状態になってしまったものの、直虎の特訓であきらめない心を身につける――というストーリーが描かれた。
題材としては2つともなかなかおもしろかっただけに、どちらも掘り下げが足りず、きっちり描き切れなかったように思えた。特に、種子島銃にまつわるストーリーは、もう少し盛り上げようがあったのではないか。鍛冶があっさりと主な部分の製法を分析したのはまだよいが、途中経過が描かれなかったのは惜しい。実際につくってみたら、なかなか苦労したという描写や、あともう少しで完成しそうだとの報告が直虎に届くといった場面があれば、その努力が一瞬にして無に帰してしまった絶望感がもう少し際立ったように思う。井伊を救う手立てとして種子島銃に賭けたが、それが自らの座を奪う道具になった……との皮肉なストーリーはドラマ向きで、主人公にとってはなかなかのピンチである。それだけに、もう少し視聴者をハラハラさせてほしかったとの思いはぬぐえない。
カタルシスがないエピソード
虎松にまつわるストーリーでは、自らの幼少期の蹴鞠勝負のエピソードを下敷きに「勝つまで勝負を挑めば絶対に勝てる」との秘策を虎松に授ける様子が描かれた。しの(貫地谷しほり)も、直虎のおかげで虎松がたくましくなったことを認めざるを得なかった。しのによる直虎への筋違いの反抗も、少しはやわらぎそうだ。
だが、そもそも虎松が不登校状態になったのは、直虎の余計な一言のせいだ。視聴者には、直虎が自分で起こした問題を自分で解決しただけのようにも映ってしまう。そのため、直虎が虎松を特訓してたくましく成長させたという筋立てに、そこまでのカタルシスが感じられない。そもそも、このエピソードの必要性というか、ドラマの中での位置付けがいまひとつわからない。
おそらく、「勇猛果敢で知られた井伊直政も幼少期はひ弱な子どもだったが、それを武士として立派に育て上げたのは直虎である」というエピソードのひとつなのだろう。それも必要であるとは思うが、「直虎のおかげで直政はレベルが上がった」的なお話が何度も続くと、これはこれでつまらない。寿桂尼(浅丘ルリ子)が倒れたことで、一気に後見の座が危うくなってきた直虎。今後の混沌とした成り行きに注目したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)