もともと2D=平面でしかない映画は、その中でいかに演出で奥行きを出すかに監督たちは腐心してきたものだが、3D映画はそれをいともたやすく克服したように思えたものの、実際は作り手の意思がきちんとしていない限り、奥行きがあろうがなかろうが関係のない、そんな無駄な奥行き3D映画が多いのも事実で、それがちまたの3D離れを加速させている要因にもなったと思える。
しかし、今回の『T2 3D』を見ると、オリジナル版の段階でキャメロン監督がいかに奥行きを重視した演出を施していたか、そしてそれが立体視されることで、その効果がひときわ際立ち、ひいては映画そのもののダイナミズムまで増幅させていることに気づかされる。
一方、3D映画と聞いて誰もが思い描く飛び出し効果に関しては、もともとそういった描写が少ない作品で、また今回のために新しくそういったアレンジなどは一切施していないので、そちら方面での「アッと驚く3D!」的なものはあまり求めないほうがよろしかろう。とはいえ、悪役の液体金属製人間型T-1000がグニョグニョ変形していくあたりのぬるぬるした立体感など、実にリアルで気持ち悪くできていて楽しい。
アーノルド・シュワルツェネッガーのごつごつした体躯も立体視のほうがより映えるというのも発見であった(つまりシュワちゃんは3D映画向きの俳優であった!?)。
また、先ほどSFXと記したが、当時の特撮はまだCGをメインとしたVFXではなく、ミニチュアや手作りの視覚効果を重視したSFXの時代であった。それが今回の3D化にあたって、むしろその立体感を際立たせることにつながったのかもしれない(その意味では、『スター・ウォーズ』も『ファントム・メナス』ではなく、77年に作られた最初の『エピソード4新たな希望』を3Dしたほうが良かったのかも?)
もし今後『ターミネーター2』を劇場で見る機会があるのなら、ぜひともこの3D版がスタンダードになってほしい。そのことでキャメロンの演出意図も明らかになり、映画そのものの魅力も貫録も奥深いものになるからである。
現在、キャメロン監督は『アバター』の続編シリーズ製作に取り掛かっているが、それらは何とメガネレスの3D映画として発表される予定と聞く。
かつて『ゴジラ』を撮った本多猪四郎監督は「いずれ、すべての映画はメガネなしで見られる立体映画になっていくことでしょう」と予見していたが、そのきっかけとなる作品を自分が生きているうちに見られるのかと思うと、待ち遠しくてたまらない。すごい時代になってきたものである。
(文=増當竜也)