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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

テレ朝、深刻な不振突入…バラエティG帯視聴率上位入りゼロ、人気ドラマS頼みの危険さ

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

テレ朝の今後

 
 今春の改編でテレ朝は全番組の3割強を組み換え、全キー局中で最多となった。最大の目玉は、土日の夜9時に生の報道番組を置いたこと。そして昼に帯ドラマを始めた点だった。この昼の帯ドラマは6%ほどとるようになり、『ワイド!スクランブル』の頃より数字を上げていた。さらに朝のワイドショー枠が『羽鳥慎一モーニングショー』となり、2ポイント以上数字を上げていた。

 これらの結果、全日は好調となり、前年同期比で1.1ポイントも改善した。午前午後の在宅者は圧倒的に高齢者比率が高い。そこをターゲットにした編成に徹したことが奏功したようだ。

 ところが夜帯は、前述のとおりバラエティが不調で結果が出ていない。今春改編の目玉、土曜夜9時の報道番組は、前年度『土曜ワイド劇場』の9掛け以下に後退している。日曜夜9時の報道番組も同様に苦戦している。春改編の成否を今判断するのは時期尚早だが、思惑通りには事態は運んでいない。

 秋改編では、報道路線がさらに強化された。少年隊の東山紀之がMCの情報番組『サンデーLIVE!!』(日曜朝5時50分~)を始めたからだ。これで平日の『グッド!モーニング』『羽鳥慎一モーニングショー』、土曜日の『週刊ニュースリーダー』を含め、朝に1週間ずっとニュース・情報番組が並んだ。夜帯を含め、「ニュースの商品化」で大きな勝負に出ようとしているようだ。

 しかし近年、ニュース番組は全局的にじり貧気味だ。HUT(総世帯視聴率)の下落や、インターネットで好きな時にニュースに触れられることも一因だ。ニュース番組は制作費を抑制できるメリットがあるが、視聴率ではかつての神通力は失われつつある。その意味で、今年度の春と秋の改編の柱が吉とでるか凶とでるかは見ものといえよう。

 ドラマについては、“勝利の方程式”がこの秋にひとつの頂点に達している。人気シリーズ『相棒』『科捜研の女』『ドクターX』がGP帯3枠を占めたからだ。序盤戦の視聴率も他局のドラマを圧倒している。その意味では、今年度下期のGP帯は、数字の改善が見込まれる。ただしバラエティの特番化と似て、シリーズ化に頼り過ぎると視聴者の飽きを招きかねない。このあたりをどうコントロールしながら新機軸も出していくのか。手腕が問われるところといえよう。

 バラエティでは、GP帯に新番組が4本誕生した。日曜は『ビートたけしのスポーツ大将』(夜7時58分~)と、リアル・オーディション番組『今夜、誕生!音楽チャンプ』(夜9時58分~)。そして月曜が『天才キッズ全員集合~君ならデキる!!~』(夜7時~)、土曜が『陸海空地球征服するなんて』(夜9時58分~)だ。このラインナップでここ3~4年じり貧だったバラエティが復活するか否か、同局が力を入れているだけに期待したい。

 以上がテレ朝の勃興と失速、そして今年度の次の一手の概要だ。この20年あまりで次々と新機軸を打ち出してきた同局だけに、今年度の新たな取り組みがどうなるか、注目したい。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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