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「海老蔵歌舞伎」がルッキズム、人種差別で炎上…クラブハウス発で箕輪厚介氏が関与の真偽

文=田口るい
「海老蔵歌舞伎」がルッキズム、人種差別で炎上…クラブハウス発で箕輪厚介氏が関与の真偽の画像1
43歳になる市川海老蔵がしかける『海老蔵歌舞伎』は、古典の名作『真盛物語』と、オリジナル“新作歌舞伎舞踊”『KABUKU』の2本立てであった。(画像は、歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」掲載の同公演ポスターより)

 その発言が物議を醸すことも多い市川海老蔵が、“本業”である歌舞伎の公演において、なんと「人種差別的な演出があった」としてネットで大炎上、各メディアも報じ、問題となっている。

 十三代目市川團十郎白猿を2020年5月に襲名予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で襲名延期中の海老蔵。そんな状況下でも、YouTubeでの動画配信を積極的に続けるなど、「歌舞伎という古典芸能の魅力を広く知らしめたい」と精力的に活動を続けている彼が今回企画したのは、自身の名を冠した『海老蔵歌舞伎』。同公演は、古典『実盛物語』(さねもりものがたり)とオリジナル新作『KABUKU』の2本立てとなっており、5月29日・30日に東京・明治座で、6月4〜13日に京都・南座で公演することとなっていた。

 同公演は海老蔵の長男・勸玄(かんげん/8歳)との共演も話題で、特に京都では勸玄が初お目見えということで注目を集めていたのだが、問題となったのは、“新作歌舞伎舞踊”『KABUKU』のほう。5月29日の明治座公演直後から、同作に対し、Twitterを中心に批判の声が集まったのだ。

「ステレオタイプな格好をした白人、ムスリム、日本人が中国人をなじる」という差別的な演出

「新作KABUKUは酷かった」
「信じられないような差別的な内容」
「ヘイト問題を、あのおちゃらけた寸劇で扱うべきではなかった」

 29日・30日の公演後、Twitterにはこうした声が次々と上がり、拡散されていく。そうした複数の投稿を総合すると、本作のストーリーは以下のようなものだったようだ。

【※以下、ネタバレあり】

「人々がコロナ禍に苦しむ令和3年の渋谷から、舞台は幕末の京都・洛中に移る。

 疫病がはやり疲弊する市民相手に伊勢神宮のお札を偽造し、婦女暴行、賄賂等の悪事の限りを尽くして大儲けする瓦版屋。

 さらに舞台は地獄に移り、「新型コロナウイルスの世界的流行の元凶だ」と、中国人風の人物を糾弾するさまざまな人種の人々の寸劇が始まる。中華帽にナマズ髭に三つ編みヘアの中国人を責め立てるのは、金髪ヘアにテンガロンハットのアメリカ人、ヒジャブをかぶったムスリム女性、お公家姿の日本人など。罵倒の言葉は『お前たちが衛生面を気にせずに、なんでも食べるからだ』などなど。

 どちらが悪いか決着をつけようと、地獄の閻魔大王の前で大立ち回りが開始。そのうち『ええじゃないか』の大乱舞が始まる――」
 
 そこでなされた表現方法を確認してみると、“ブス”は何をされてもよく、“美人”は男の言いなりになるべきというルッキズム、古くからあるステレオタイプな服装などを用いての差別的な人種表現、「新型コロナは中国人のせい」という一方的な言説。21世紀の日本においてこうした表現をするのだから、当然そこには「あえてやっている」という批評性があるのかと思いきや、Twitterの投稿を読む限り、そうした批評的な意図は感じられず、ただただ不快なものだったという――。

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公演からさかのぼること3カ月前、3月10日に箕輪厚介氏がツイッターに投稿した、海老蔵、西野亮廣とのスリーショット。このツイートを見る限り、西野と箕輪の両名がなんらかの形で『KABUKU』の制作過程に関与しているのは間違いないように思われる。(箕輪厚介公式Twitter「箕輪厚介(痛風以外はかすり傷)」より)

Clubhouse発で、西野亮廣と箕輪厚介が関わったと思しき『KABUKU』の制作過程とは

 こうして批判の的となってしまったこの『KABUKU』について、本サイトが同公演の制作を担った株式会社松竹にコメントを求めたところ、「多様性を尊重する趣旨のことを風刺的に描こうとした演出意図であり、松竹側でも事前に把握はしていたが、その演出意図が充分な練り上げをされないまま作品として世に出てしまった。もっと慎重な検証を重ねるべきであった」などの回答が得られた(回答全文は、本記事の最後に掲載)。

 しかしこの作品が炎上したのには、もうひとつワケがあった。作品の制作過程、そして関わった人物らが、そもそもいわくつきのように見えたのである。

『KABUKU』の原作を手がけたのは、マンガ『金田一少年の事件簿』『神の雫』(ともに講談社)などで知られるマンガ原作者の樹林伸。彼と海老蔵は、2015年にも新作歌舞伎『石川五右衛門』でタッグを組んでいるのだが、問題は今回の作品のそもそもの“出自”。実は本作、演出担当の海老蔵が、音声SNS・Clubhouseで“気鋭のクリエーターたち”とやり取りをするなかで生まれたというのがウリのひとつとなっているのだ。

 海老蔵は、「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人(かぶきびと)」で4月27日に配信された記事「海老蔵が語る、明治座、南座『海老蔵歌舞伎』」において、『KABUKU』について以下のように語っている。

(初の試みとなる、『Clubhouse』での制作のきっかけを)「制作過程自体をビジネスにする、プロセスエコノミー的な創作が可能なのではと思いました」

 一時もてはやされたものの、あっという間にブームが収束してしまったClubhouseでのやり取りをきっかけに新作歌舞伎を制作……という事態に対して、「うさんくさい」と見るか「新しくすばらしい試み」と見るかは人それぞれだろう。ただ、このClubhouseでのやり取りに関与していた人物として、タレントにして“絵本作家”のキングコング西野亮廣、そして幻冬舎の名物編集者・箕輪厚介の名前が挙がっていたからこそ、前述の炎上騒ぎの火がより大きくなったことだけは確かだった。

 西野が、クラウドファンディング事業や自身が運営するオンラインサロンに関して批判を浴びることが多いのは周知の事実。また箕輪氏といえば、ホリエモンこと堀江貴文や与沢翼らクセのある有名人の書籍を手がけたヒットメーカーとして知られる一方、女性ライターに対するセクハラ疑惑を「文春オンライン」に報じられたこともあるお騒がせ有名人だ。

 このふたりのここ数カ月の動向をチェックしてみると、公演からさかのぼること3カ月前、3月10日に箕輪氏が投稿したツイートには、「とんでもないことが起こる。荒事!」の言葉とともに、海老蔵、そして西野とのスリーショットを掲載。海老蔵もそれを引用リツイートしており、「とんでもないことを起こす」との言葉が見える。『KABUKU』の最終盤では、歌舞伎の重要な演出方法のひとつである「荒事」の場面があり、となればこのツイートを見る限り、西野と箕輪氏の両名がなんらかの形で『KABUKU』の制作過程に関与しているのは間違いないように思われる。となれば、批判を呼んだあの差別的な演出方法に関しても、両名は関与しているのであろうか?

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「人種差別的な演出があった」と問題になっている 『KABUKU』の原作を手がけた、マンガ原作者・樹林伸氏のツイート。(樹林伸公式Twitter「樹林伸・天樹征丸・亜樹直」より)

原作者は「箕輪氏は関与していない」と主張するが、箕輪氏のツイートを見てみると「とんでもなくかぶきたい」

「『KABUKU』の原作者として名を連ねる前出の樹林伸氏は、今回問題になっている演出の“元凶”は樹林氏ではないかといったツイートをしたユーザーにリプライする形で、騒動後の6月5日、『稽古の段階でとめましたが、東京では間に合いませんでした。京都では大丈夫です。素晴らしいお芝居なので、楽しみにしてください』とツイートしました。さらに続けて、『まあでも、事情あって稽古後半行けなくて、止めきれなかったので、僕も責任感じてます』との言葉もあり、件の演出を稽古段階で止めようとしていたと説明しているようですね。

 また、本作に箕輪厚介氏が絡んでいるというツイートをしたユーザーには、『彼は関係ないです』と答えて箕輪氏の関与を否定しており、箕輪氏本人もこれをリツイートしてはいるのですが……」(全国紙文化部記者)

 しかし、箕輪氏のツイートをさらにさかのぼって見てみると……

「箕輪氏は2月10日には、『海老蔵さんと歌舞伎をアップデートする会議。大変そうだけどめちゃ刺激的なプロジェクト。とんでもなくかぶきたい』とツイート。

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樹林は『KABUKU』への箕輪の関与を否定したが……。(箕輪厚介公式Twitter「箕輪厚介(痛風以外はかすり傷)」 より)

 さらに4月22日には、『KABUKU』を取り上げたネットニュースを引用したうえで、『海老蔵さんと始めた新しい歌舞伎「KAUBKU」がニュースになりました。音声SNS「Clubhouse」から誕生した新作歌舞伎舞踊「KABUKU」がラインアップ。6月には京都・南座でも上演されます』(原文ママ)ともツイートしています。

 これらを読む限り箕輪氏は、少なくとも4月下旬の時点までは、なんらかの形で『KABUKU』に携わっていたことは間違いないと思うのですが……」(前出・文化部記者)

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ツイートを読む限り、箕輪厚介がなんらかの形で『KABUKU』に携わっていたことは間違いないのではないだろうか。(箕輪厚介公式Twitter「箕輪厚介(痛風以外はかすり傷)」 より)

一連の騒動について、Twitterやブログでは一切触れない市川海老蔵は何を思うのか?

 一連の炎上騒ぎやメディア報道を受け、松竹サイドは「一部本来の演出意図と異なる捉え方を招いてしまった箇所がございましたので6月4日の南座公演初日より演出を変更して上演」するとコメント。このコメントの通り、京都・南座で公演された『KABUKU』では、中国人らしき人物が登場しないなど、指摘された差別問題について、問題のない演出に変更された模様だ。

 事実、東京・明治座での公演後は差別的な演出について批判が飛び交っていたTwitter界隈も、京都・南座での公演後は「海老蔵さんの迫力が凄かった! 勸玄くんがかわいかった」「ダンスがすごい」といった賛辞が目立っていた。

「日本の方々もさることながら、日本の文化を世界の方に楽しんでいただけるような企画にするのが、ひとつのゴールです」

 前出の「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」の4月27日配信 インタビュー記事ではこのように語っていた海老蔵。6月4日に京都・南座での公演が開始されて以降も彼はひんぱんにTwitter、ブログの投稿を続けているが、いずれの投稿においても、一連の騒動については一切触れられていない。

(文=田口るい)


【株式会社松竹のコメント全文】
Q.上演内容に「中国人のせいで新型コロナウイルスがばら撒かれた」など人種差別的なニュアンスが感じられる演出があったとネット等で指摘されているが、この演出について事前に把握していたのか?

「新作に取り組むときはいつもそうですが、今回もアイデアの初期段階から初日を迎える直前の舞台稽古に至るまで、俳優・スタッフ共々、ディスカッションを行いつつ進めてまいりました。

 異なる価値観を認め、多様性を尊重するというメッセージが観客にキチンと受け止めてもらえるか、試行錯誤の連続であったことは間違いございません。

 風刺的に描こうとした演出意図が感じて頂けるかどうかが鍵でしたので、その点に充分な練り上げを施さないまま作品として世の中に出してしまったと言わざるを得ず、慎重な検証を重ねるべきであったと認識しております。
今後、テーマの取り上げ方と共に、その表現方法の是非に関しては最大限の注意を払いつつ、世の中に良質なエンターテインメントを提供して参りたいと思っております。

 該当する場面は、“世界共通、時空も関係ない設定の地獄の果ての閻魔の庁。時代も国も異なる人々が地獄におちてまでも、自己中心的にそれぞれの主張を繰り広げ、他者を受け入れようとしないでお互いに争い続けること”を描いています。異なる価値観を認め、多様性を尊重するという趣旨のことを風刺的に描こうとした演出意図でした。そして、この演出意図は弊社でも事前に把握しておりました」

Q.制作段階で、今回の演出について問題視する意見などは出なかったのか?

「制作段階では、上記の演出意図を把握していましたが、結果として、一部本来の演出意図と異なるお客様の捉え方を招いてしまった箇所がございました。最初の回答と重複しますが、風刺的な描写として何を取り上げるかは、製作過程の中でも様々な意見がありました。現代社会の中で起きている様々な事象をより明確に想起してもらうために、より時事性、話題性の高い具体例を取り上げた、という事でございました」

Q.6月4日から13日まで予定されている京都・南座公演では、今回の演出に変更などはあるのか?

「一部本来の演出意図と異なる捉え方を招いてしまった箇所がございましたので6月4日の南座公演初日より演出を変更して上演いたしております」

以上

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