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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

原爆Tシャツ・ナチス軍服騒動のBTS、存続の危機…国際問題に発展、世界のユダヤ人を敵に

文=相馬勝/ジャーナリスト

 SWCは、世界中の出版社や新聞社などのマスメディアから恐れられている存在だ。私は仕事柄、出版社の方に知り合いが多いが、私が知る編集者らはSWCを怖がっており、SWCの名前が出ると「何があったのですか。彼らに睨まれたら、この商売は終わりですよ」と小声で言うくらいだった。新聞社出身で出版界に疎かった私も、彼らの行状を知るに、戦慄せざるを得なくなった。

 その事件は、出版界では誰でも知っている「マルコポーロ」廃刊事件だ。
 
 1995年1月、同誌に掲載された、アウシュヴィッツのガス室に疑問を投げかける記事が掲載されたことで、SWCは駐米日本大使館の大使に抗議。文春側の態度が決まらないなか、SWCは「マルコポーロ」への広告差し止めを呼びかけ、フィリップモリス、マイクロソフト、フォルクスワーゲン、三菱自動車などが広告出稿を差し控えた。結局、文春側は一方的に謝罪し、「マルコポーロ」は廃刊となり、花田紀凱編集長は解任され、田中健五社長は辞任した。

 日本の全国紙にもユダヤ人のホロコースト絡みで、SWCによる抗議を受けたことがある。2014年11月26日付「産経新聞」東海・北陸版に「ネットジャーナリスト リチャード・コシミズがユダヤ独裁国家アメリカの謀略を暴く!!」と題して3冊の本の広告が掲載された。SWCは12月4日付で産経新聞の熊坂隆光社長宛てに抗議文を送った。産経新聞の対応は素早かった。産経は文春ほどSWCを甘く見ておらず、抗議からわずか2日後の6日付の朝刊に経過説明と熊坂社長名によるおわびの記事を掲載。その後、SWCが再び産経に抗議したとの話は聞かない。

 話をBTS問題に戻すと、BTS問題とマルコポーロや産経新聞との問題は別次元だが、日本の出版界でも有数の出版社の編集長と社長までが責任を取って辞任。全国紙のトップが謝罪したことからも、SWCを敵に回すといかに怖い存在かは十分わかるであろう。

 BTSは原爆Tシャツ問題について、その経過の発表や公式な謝罪を行っていない。SWC側への返答も現段階ではない。戦争が終わって60年経っても、ナチスの戦犯を追い詰め続けたSWCだけに、時間がたてばたつほどSWC側の抗議は激しく、執拗になっていくことが予想される。それだけに、BTSは早く対応を打ち出さないと、それこそ存続の危機が現実のものとなっていくのではないか。韓国とは違って、日本政府や政党はBTS問題で批判のコメントを出していない。しかし、SWCは日本ほど寛容ではないということを早く認識すべきだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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