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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

本田圭佑のカンボジア監督就任、協力相手は国民大虐殺の首謀者…本田批判は筋違い

文=相馬勝/ジャーナリスト

 動画では、一言ひとこと思いを込めて語っているのが印象的だった。さらに、11月21日付のツイッターには次のように書き込んでいる。

「なぜスポーツが素晴らしいか。なぜサッカーが人気があるか。それは産まれた国や、肌の色、経済力に関係なく誰もが能力を磨けば国境をこえてヒーローになれるから。そこを邪魔できる人は存在しないし、させたらあかん」

 このつぶやきには本田氏のサッカー観が表れていると思うし、本田氏がカンボジアでサッカーの仕事をする意味が、そこに盛り込まれているように感じる。

 現実の話として、政治的にはサオ・ソカ氏について、HRWが懸念するようなことが起こるかもしれないが、それをどのように判断するかは本田氏自身であり、本田氏は国際的にまったく無名なカンボジアのサッカーを強くすることに専念すべきだろう。カンボジアでは1970年代に、ポルポト政権下で大量虐殺が行われた暗い過去はいまだに払しょくされていないが、本田氏が来たおかげで、カンボジアのサッカーが強くなり、国民、とりわけ子供たちに希望や自身、将来への自信を与えることができれば、そのこと自体が本田氏のカンボジア入りの意味がある。

 第2次世界大戦で、ナチスドイツがユダヤ人の大量虐殺に関与し、この戦争犯罪をめぐって、アメリカのユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が戦後、50年をかけて、1100人以上の戦犯を起訴に追い込んだ例はある。サト・ソカ氏の戦争犯罪疑惑や人権侵害行為に関連して、本田氏がサム・ソカ氏を擁護するような発言をしたのならば別だが、そうではない。カンボジアでの過去の出来事とはまったく無関係の本田氏が監督に就任することについて、まるで本田氏が悪いかのように書簡が送りつけられたり、批判されるというのは、政治とスポーツの混同である。本田氏のサッカーやカンボジアを思う気持ちを踏みにじっているように感じるのは、筆者だけだろうか。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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