大河1話に1億円以上をかけることも
本来の大河ドラマファンである中高齢者はすでに脱落し、一方のドラマ好きからも「わかりづらい」と酷評される始末。これでは、視聴率が回復する兆しが一向に見えない。あるスポーツ紙の芸能記者は、『いだてん』の今後をこのように分析する。
「女優・石田ひかりの夫としても知られる、『いだてん』プロデューサーの訓覇圭(くるべ・けい)氏は『子どもが観て楽しいねって思ってもらえる作品にしたい』とコメントしていましたが、大河の裏番組には、バラエティで常に視聴率No.1の『世界の果てまでイッテQ!』がある。まず、この枠で子ども向けを意識すること自体が間違っていると思うんですよ。とはいえ、スピーディーな展開と複雑な構成を中高年層がわかるはずもない。結局、自分らがおもしろいと考えるドラマづくりにしかなっていないのではないかと思います。2つの時代にまたがって、狂言回しも若き日の古今亭志ん生と重鎮落語家の古今亭志ん生と2人いて、2人ともナレーションを担当するって、誰が理解できますか。いくらなんでも革新的すぎますよね。大河ドラマにはベタな展開と安定感こそ求められるのに、それがまるでない時点で、このドラマは間口が狭すぎます。
また、大河ドラマの制作費は平均すれば1本5000〜6000万円ともいわれていますが、回によってはがっつり1億円以上の予算をつぎ込むこともあります。この金額をかけて、この自由奔放すぎる作風……という現状に、苦虫をかみつぶしている民放のドラマ制作者はたくさんいると聞きます。低視聴率が続くため、脚本のテコ入れや、脚本家の更迭などもネットニュースでは囁かれていましたが、スポンサー不在のNHKがそんなことをするわけがないでしょう。『作品自体はおもしろいし、脚本もドラマも完成度が高い。ただ、視聴率が悪いだけ』。NHKの関係者に聞くと、それ以上でも以下でもないという雰囲気です。スポンサーがいない時点で、テコ入れを強要される筋合いがまずないんです。今後も、どんな視聴者をターゲットにしているかも判然としないまま、低視聴率の記録を塗り替えていくことでしょう」
どの世界においても、革新性やイノベーションが求められがちな現代。しかし、由緒正しき大河ドラマの世界では、“ほどほどの安定感”が求められるようだ。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>