プッシュと賞取りの“ダブル”の霜降り明星
お笑いブームの中、2008(平成20)年にレギュラー放送が始まったフジテレビ系『爆笑レッドカーペット』をきっかけに人気者となったのが、はんにゃ、フルーツポンチ、しずる。同番組から派生した『爆笑レッドシアター』にはこの3組のほか、『めちゃ×2イケてるッ!』の新レギュラーに決まったジャルジャルもレギュラー出演していた。吉本はこれらの若手芸人をプッシュしたが、大きな結果にはつながらなかった。
2010(平成22)年にはフジテレビ系『ピカルの定理』がスタート。メイン出演者だったピースが強力にプッシュされ、売れっ子芸人の仲間入りとなる。その後、又吉直樹は芥川賞を受賞、綾部祐二はアメリカに拠点を移し、それぞれの道で活動中だ。
ここ数年のプッシュ芸人といえば、2013(平成25)年に放送されていたフジテレビ系深夜番組『バチバチエレキテる』などにも出演していたニューヨークだろう。今現在もさまざまなバラエティー番組やネタ番組に多数出演しているが、いまだブレークは果たせていない。
平成における吉本プッシュ芸人の歴史を一気に振り返ってみたが、これとは別にフットボールアワー、ブラックマヨネーズ、チュートリアルなど、賞レースで結果を出したことをきっかけにブレークした芸人も多い。また、タカアンドトシ、博多華丸・大吉、千鳥など、じわじわと売れていった芸人もいる。
ただ、霜降り明星が出てくるまでは、吉本からの強力なプッシュがあったうえで、さらにM-1などの賞レースでも優勝した……という芸人はいなかったのも事実。その点において、霜降り明星は「これまでの吉本プッシュ芸人とはわけが違う」といえるのかもしれない。
ダウンタウンのブレークから始まった平成のお笑い界。令和のお笑い界は、霜降り明星の大ブレークで幕を開けることになりそうだ。
(文=青野ヒロミ)