廉価版のニンテンドー2DS、欧米でのみ発売の本当の狙いとは?訴訟回避、入門者向け…
任天堂は8月28日、新型携帯ゲーム機・ニンテンドー2DSを欧米で発売すると発表した。現行機種・ニンテンドー3DSの廉価版で、人気ソフト『ポケットモンスターX・Y』の発売に合わせて、10月12日に欧米とオーストラリアで発売されるというニュースを各メディア伝えた。
8月29日付日本経済新聞によると、2DSでは3DS用ソフトが遊べるものの、3D表示機能と折りたたみ機構は省かれる。希望小売価格は米国で129ドル99セントと、3DSの169ドル99セントよりも2割程度安い設定だ。同社は昨秋発売した家庭用ゲーム機・Wii Uについても、欧米仕様に限って実質1割ほどの値下げを発表しており、同紙によれば、「主力のゲーム機が振るわず、直近の2013年4~6月期連結決算も営業赤字となった」同社が、「割安感で巻き返し、利益率の高いゲームソフトの販売増につなげる」狙いがあるという。
ネット上には早速さまざまな反応が寄せられているが、デザインは不評のようで、折りたたみ機構がないことに「持ち運びに不便」「操作しにくそう」などの声が相次いでいる。
しかし、現時点では日本での2DSの展開は予定していないようだ。J-CASTニュースの8月29日付配信記事のインタビューで同社広報は、2DSは「欧米など『本体価格が高い』とされている国限定」のものであると答えており、12年に500万台超が売れ、13年1~12月の店頭販売台数も500万台を見込める日本国内では、廉価版の2DSを投入する必要はないという。
ゲーム業界に詳しいブロガーで投資家の山本一郎氏は、Yahoo!ニュースの8月29日付配信記事で、廉価版である2DSの発売を「ハードを値下げしても肝心のソフトに良いものがなければゲームビジネスは成り立ちません」と厳しく指摘。しかし、その一方で「北米・欧米市場向けという割り切り方に徹しているあたり、少しは評価できる部分があるのかもしれません」と、2DSの欧米のみでの販売を評価した。
●特許訴訟で多額の損害賠償
さらに、山本氏は任天堂が2DSを欧米でのみ発売することについて、「米国における特許訴訟のゴタゴタが影響しているのではという憶測もあるわけでして」とも推測している。
任天堂は3DSにおいて、3D技術の特許を侵害しているとして今年3月、米連邦地裁で損害賠償を支払うように求める陪審評決がくだされている。ロイターの8月15日付配信記事によると、問題となった特許は専用のメガネなしで3D映像を見る技術。元ソニー従業員が米国で特許を取得し、11年に任天堂を提訴していた。
陪審団が支払いを求めた賠償額は3020万ドル。その後、1510万ドルに半減する判決が下された。任天堂は陪審評決の撤回と新たな賠償責任に関する口頭弁論の開催を要求していたが、退けられている。
この判決について、山本氏は「半減されたとしても1510万ドルという額から考えれば、今後も裸眼3D技術の使用を継続するのは任天堂にとってリスクや負担が大きすぎるのかもしれません」と分析している。
米国任天堂のレジー・フィサメィ社長は、ウォール・ストリート・ジャーナルの8月29日付配信記事で、「立体映像は幼児に影響を与える恐れがあるため、立体映像のない入門者向けに関心があることがわかったため」と2DS発売の理由を語っているが、本音は「幼児への配慮」と「特許訴訟回避」のどちらにあるのだろうか。
いずれにしても、2DS発売のニュースは国内外問わず、多くのゲームファンの注目を集めている。今秋にはソニーがプレイステーション4、マイクロソフトがXbox Oneと、据置型の新型機を投入する予定。ゲーム機市場に激しい競争が起こるなか、任天堂は2DSの投入で巻き返しを図ることができるだろうか?
(文=blueprint)