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理央周「マーケティングアイズ」

いちご大福、iPhone…ヒット商品はなぜ生まれたのか?簡単な画期的発想法と阻害要因

文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長
いちご大福、iPhone…ヒット商品はなぜ生まれたのか?簡単な画期的発想法と阻害要因の画像1「Thinkstock」より

 どの企業も、新しいプロダクトを世に出そうと必死になっているが、大企業が開発費をかけないと、イノベーションは起こせないのだろうか?

 筆者はそうではないと思っている。顧客に新しい価値を提供するという「広い意味でのイノベーション」で考えてみて、画期的な発想を自社のプロダクトに当てはめればよい。

「でも、新しい発想ってなかなかできないじゃないですか」

 顧問先や研修の依頼先からよく聞かれることがあるが、実は筆者自身も以前は同じ考えだった。売れる商品につながる新しく画期的な発想が出てこないのは、「思考が停止」してしまうからである。思考がストップするのは、大きく分けて2つの要因がある。

(1)固定観念
(2)過去の成功体験 

 この2点が、自由な発想を阻んで思考を停止させてしまうのである。

「そんなの売れるわけないよ」「こうに決まっている」という固定観念と、「うちの会社では以前この商品で成功したのだから、いくら画期的でもそんな新商品売れるわけないよ」という過去の成功体験が、製品開発の初期段階で画期的な発想を潰してしまうのである。

新結合が生んだ、いちご大福

 いちご大福というプロダクトがある。生のいちごが入っている大福で、もちの中に入っているあんこといちごの甘さが不思議にマッチして、筆者の大好物である。

 初めていちご大福をつくった人が、「大福の中に生のいちごなんて入れても美味しいわけがない」という固定観念を持っていたり、「うちの店は創業以来、大福が売れてここまできたのだから」という過去の成功体験にとらわれていたら、いちご大福は生まれなかったに違いない。

 いちご大福は、「いちご」と「大福」という、すでに世の中にある製品同士を組み合わせたプロダクトである。このように、既存のプロダクトを組み合わせることで新しい価値を創造することを、米経済学者シュンペーターは「新結合」と呼んだ。ちなみに筆者が住んでいる名古屋の名物には、このような新結合が多い。「ひつまぶし」はうな丼とお茶漬けの合体だし、味噌カツはトンカツにソースではなく、味噌をかけて食べる。

 iPhoneも、「携帯電話とインターネットとiPod」を組み合わせたプロダクトである。もちろん指一本で使えるシンプルな操作性やアプリの豊富さなどもあり普及したわけではあるが、プロダクトとしてのiPhoneはこの3つが合わさったものなのだ。

 アップルに「スマートフォン(スマホ)には数字や文字のボタンがあって当たり前」という固定観念や、「うちはPCと音楽配信で成功してきたのだから」という過去の固定観念への強すぎるこだわりがあったなら、iPhoneは生まれなかったであろう。

 ここで重要なことは、

(1)イノベーションは設備投資や画期的な技術革新だけを指すのではない
(2)「意外」なもの同士の組み合わせである

ということである。(1)に関していえば誰にでもチャンスはあるわけだし、(2)に関しては、固定観念にとらわれることなく自由な発想をすることで新結合となり、ヒット商品や売れる飲食店につながることになる。つまり、

「ヒット商品につながる画期的な発想は誰にでもできる」

 ということなのである。

思考がストップしない自由な発想をする方法

「そんなこと言っても、自由な発想なんて簡単に出てこない」

と思う人は多いであろう。ここで、筆者がマーケティング講座でいつもお話しする「発想術」のヒント、というかコツを2点挙げさせていただく。

 ひとつは、時間がある時に、ちょっとしたトレーニングをやってみることである。まずは身の周りにあるいちご大福のような新結合を探してみる。この時のコツは、難しく考えずに気楽にやることである。

 もうひとつは、固定観念を外すために、自分が気づかないことを教えてくれる「鏡のような人」に聞いてみること。自分の頭の中にある「考えていること」を自分の目で見ることはできない。鏡で自分のヘアスタイルを見てみるように、鏡になってくれる人から気づいたことを教えてもらうことで、自分の中にある見えないバリアを外してもらえばよい。

 この時のコツは、「自分と同じ価値観だが、タイプが違う人」に鏡になってもらうことである。筆者の場合でいえば、自身は男性で筋道を立てて考える左脳派タイプのコンサルタントなので、「感性豊かな右脳タイプの同じ女性起業家」といった具合である。

 価値観は同じなので、大きく外れることもない。また、異性や他業種の友人であれば、自分の視点とは異なる考え方を持っていることが多く、自分では気がつかないことを見つけてアドバイスをもらえることにつながる。

 このように、シンプルな方法を使って自由な発想をすることが画期的な企画につながり、ヒット商品や売れる飲食店を生み出すことになる。
(文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

●理央 周(りおう めぐる、本名:児玉 洋典)

マーケティング・コンサルタント、企業研修講師。1962年生まれ。静岡大学人文学部卒。フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得。アマゾンジャパン株式会社、マスターカードなどで、マーケティング・マネージャーを歴任。2010年に起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年より関西学院大学経営戦略研究科教授として教鞭をとる。著書は『「なぜか売れる」の公式』(日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)など。商工会議所や経営者会での講演、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌への出演、寄稿も多数。


マーケティングアイズ株式会社

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