加齢臭はがん、糖尿病の兆候?“猛毒な”トランス脂肪酸や加熱油を大量摂取の恐れ
酸化した油は猛毒
トランス脂肪酸と並び、私たちにとって危険極まりないのが「酸化した油」です。油には、「摂取してよい油」と「絶対に摂取してはいけない油」があるのですが、トランス脂肪酸と酸化した油は両方とも、絶対に摂取してはいけない油です。
油が、主に加熱によって酸化すると体にとっては猛毒となり、それを知らずに多量に摂り込んでしまうと、防御反応として嘔吐や下痢などの症状が起きることもあります。そこまで至らなくとも、劣化した油を使って調理したものを食べた後、酸っぱいゲップが上がってきたといった経験をしたことがある人は少なくないはずです。油を熱すると分解が起こり、その分解した成分と酸素分子が化合して酸化が始まります。油で調理したスナック菓子や揚げ物の油には、酸化した油が多量に含まれています。それを日常的に摂取していると健康のレベルが低下してしまいます。
さらに注意しなければいけないのは、私たちの体内に不飽和脂肪酸が摂り込まれた時に、その一部が活性酸素の働きによって、過酸化脂質という非常に毒性の強い物質に変化してしまうことです。過酸化脂質は周囲の細胞を連続的に酸化させていき、結果として細胞自体が機能を損ない、やがては細胞の中の核にあるDNAを傷つけることになります。そうして細胞が変異することでがん細胞に変化してしまうのです。
呼吸によって取り込まれた酸素の2~3%は活性酸素になるといわれています。活性酸素は一方で私たちの体にとっては猛毒なのですが、他方では体内に入ってきた細菌やウイルスなどをやっつけて無害化してくれるという有益な働きも持ち合わせています。したがって、ある程度の活性酸素は身体にとって有用なのですが、問題は必要以上に活性酸素が体内で大量に発生してしまうことです。それを防いでくれるのが、いわゆる抗酸化物質で、野菜や果物に含まれる植物栄養素(植物化学物質とも呼ばれる)や、ビタミンC、ビタミンEがその代表といえます。
加齢臭は危機的状態のサイン
活性酸素の量が増えてしまうと、もともと体内に摂り込まれていた脂質も酸化してどんどん過酸化脂質の量も増え、さらにまた活性酸素も増えるという悪循環が発生します。そしてそのことで体は激しく老化してしまうのです。40歳を過ぎるあたりからは、酸化に対する抵抗力が低下し始めます。その時に体の表面の皮脂が酸化すると「ノネナール」という物質が発生するといわれていますが、実はそのノネナールが“加齢臭”の原因です。加齢臭は自分では気づきにくく、周囲の人は不快な思いをしていることも多いようなので、気をつけなければいけません。
加齢臭は、体全体の酸化を食い止める力が弱まっていることの表れであり、「たかが加齢臭」などと侮っていると、生死にも関わる重大な疾病につながっていくことがあると認識しておいたほうがよいでしょう。加齢臭がし始めたときには、体の酸化が相当進んでいますから、それだけ危機的な状態になっているサインなのだと受け止めなければいけません。
がんをはじめとして、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病予備軍となっている可能性も高いといえます。深刻に受け止め、すぐさま対処しなければならない事態なのですが、加齢臭を発生させないようにするには、食習慣を変えるしかないのです。
まずは、動物性タンパク質、そして動物性脂肪を過剰に摂らないようにすることから取り組んでください。加えて、身体の酸化を食い止めてくれる抗酸化物質を多く含む食べもの、つまり新鮮な野菜や果物を積極的に食べることです。たばこを吸う人は特に気をつけなければいけません。たばこに含まれているニコチンが発汗を促して体臭がきつくなり、同時に体内のビタミンCを大量に奪ってしまうからです。大事な抗酸化物質であるビタミンCを浪費して、体が酸化に抗う力を失ってしまうことになります。加齢臭を防ぐには、たばこを吸わないことも重要になります。
前述したように、加齢臭は自分ではなかなか気づきにくいため、身近な親しい人に思い切って一度聞いてみる勇気が必要かもしれません。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)