現在の印西市の人口は約10万人。本来であれば日本最大規模のニュータウンになるはずだったが、千葉ニュータウンの人口が増えなかった原因は主要鉄道の高額な運賃にあるという。
「千葉ニュータウンを走る主要路線の北総鉄道北総線は、日本一運賃が高い鉄道として有名です。たとえば、北総線千葉ニュータウン中央駅から他線に乗り換えできる新鎌ヶ谷駅までの距離は11.1kmで運賃は570円(大人、きっぷ運賃)。この距離を北総鉄道の親会社の京成電鉄の運賃と比較してみると、上野駅から青砥駅間は約11.5kmで260円(大人、きっぷ運賃)です。同じ京成グループにもかかわらず、310円もの差があるんです」(同)
沿線住民たちは「北総線の運賃値下げを実現する会」を発足し、今も抗議を続けているが、値下げには至っていない。しかし、なぜ北総線の運賃は高額なのだろうか。
「北総線の駅は莫大な費用をかけて建設されました。建設費の借金返済のために運賃を下げることができないのですが、逆に運賃が高すぎて利用者が増えないという悪循環を招いています」(同)
その打開策として、2014年から地域住民が地元の鎌ヶ谷観光バスに働きかけ、北総線と平行して走る路線バス「生活バス ちばにう」の運行を開始した。千葉ニュータウン中央駅から新鎌ヶ谷駅まで300円で乗ることができるという。
「ただ、この『ちばにう』に対抗するように、京成グループはグループ会社の『ちばレインボーバス』の新路線を運行開始しました。ちばレインボーバスの新路線は、ちばにうと同じような運行経路で同程度の運賃。こうしたバス路線の複雑さもまた、印西市の交通事情を複雑にしている要因でもありますね」(同)
バスを走らせてでも北総線の運賃は上げたくない……そんな執念を感じる。
幻に終わった「成田新幹線」構想
千葉ニュータウンにまつわる鉄道の受難は、北総線の高額な運賃だけではない。
「当初、千葉ニュータウンには北総線のほかに国鉄の『成田新幹線』と千葉県営鉄道『北千葉線』という路線が乗り入れる予定でした。都市開発と平行して1970年代に鉄道用地の開発も進められています。なかでも注目されていたのは『成田新幹線』計画。これが実現すれば、約30分で東京駅と成田空港を結ぶことができたんです」(同)