しかし、成田新幹線は建設予定地に反対運動が起きたことや国鉄の経営悪化などによって計画が頓挫する。また、都営新宿線・京王線との相互乗り入れを予定していた北千葉線は用地の買収が進まず、2002年に計画が廃止された。そんな厳しい状況下で、北総線だけが開業した。
「もし北千葉線が通って都営新宿駅までつながっていれば、都心へのアクセス面の心配は減り、早い段階で人口増加につながったかもしれませんね」(同)
都心へのアクセスには課題がある一方で、近年では人口がゆるやかに増加している印西市。鳴海氏も「東京近郊でマイホームを持ちたい家庭には魅力的に映るかもしれない」と話す。
「今時、都心まで約40分という立地で土地付きの広い戸建てを持つのは至難の業ですが、千葉ニュータウンならば数千万円で購入できる物件が多くあります。また、自然豊かな環境で子育てをしたいという家庭にも人気ですね。広大な土地が余っているので、今後も若年世代の流入は増えると思いますよ」(同)
印西市を走る国道464号線沿いにはイオンモールなどの大型商業施設が立ち並び、クルマさえあれば買い物には困らない。ただ、「ニュータウンの高齢化」には懸念が残るという。
「東急沿線の『たまプラーザ』などのニュータウンは住民の高齢化が問題視されており、沿線開発に携わった東急電鉄は高齢化対策に力を入れています。しかし、千葉ニュータウンの運営母体は千葉県。自治体が企業のテコ入れのような積極的な対策ができるのか、という不安はありますね」(同)
今は若年世代に人気があっても、数年後には一気にオールドタウン化する可能性も高いという。住みよさナンバー1の印西市は、データからは読み取れない難題も抱えているようだ。
(文=谷口京子/清談社)
●取材協力/鳴海行人(なるみ・こうじ)
神奈川県生まれ。学生時代に地方私鉄とまちのつながりや駅の空間を中心に研究活動を行う。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経てフリーに。2017年から「まちコトメディア」の「matinote」でライター兼編集長を務めるほか、「まち」や「交通とIT」などをキーワードにさまざまな媒体で活動を行う。最新情報はホームページで配信中。
●まちコトメディア「matinote」
【参考資料】
●「最新版!『住みよさランキング2018』トップ50」(東洋経済オンライン)
●「北総鉄道が高い運賃を下げられない理由」(マイナビニュース)
●「生活バス ちばにう運賃」
●「ちばレインボーバス運賃」