トイレ使用時の注意
トイレで用を足した後は、手を洗う前にズボン、ベルトなどに手を触れます。つまり、その時点で作業着はウイルスに感染する可能性があります。週2回くらいしか作業着を交換しない工場も多くありますが、本来は毎日洗濯されたものと交換することが必要なのです。また、作業着には一般的なベルトを使用しないようにするべきで、もちろんエプロンなどはトイレに入る前に取り外すことが必要です。
ノロ対策は手洗いに始まり手洗いに終わる
ノロウイルス対策は「手洗いに始まり手洗いに終わる」といって間違いありません。手洗いの基本は、まず手指の点検から入ります。指輪、時計、ミサンガなどの装飾品を身につけていないこと、爪は短く手入れされていること、手荒れがないこと、以上を確認した上で手洗いを実践します。
まず手を濡らし、手洗い洗剤をつけ、細かい泡が立つまで30秒程度泡立てます。この洗剤をこする30秒の工程が必要なのです。手先だけでなく、手首や肘のあたりまで洗います。手洗い洗剤を手で泡立てるとわかりますが、時間がたつにしたがって泡が細かくなってメレンゲの用に泡が立ってきます。細かい泡になって初めて、手指からウイルスを取り除くことができるのです。
その後、水で流してペーパータオル、エアージェットなどで水分を除去します。経費節減のために十分な水量が出ない手洗い設備があるので、しっかり流すよう注意が必要です。エアージェットはフィルター内部などを頻繁に清掃しないと、せっかく洗った手を汚染することがありますので、ノロウイルスが流行する時期は使い捨てのペーパータオルがお勧めです。
トイレから出るときに、ドアノブや電気のスイッチなどに触れる必要がないような設備にすることが不可欠です。
そして清掃を徹底します。
ノロウイルスに感染した人が出勤してきたとして考えてみましょう。たとえ下痢などの症状がなくても、保菌している可能性はあります。出勤してきてから、作業者が手で触れるところの清掃を徹底します。
ノロウイルスに有効なのは塩素ですので、濃度200ppm程度の塩素で絞ったタオルで徹底的に拭き上げます。鉄でできているドアなどは塩素で拭くと腐食してしまいますので、スイングドアなどを使用している場合は、手の触れるところにステンレスの板を張り付けるといいでしょう。そうすれば、毎日拭き上げても腐食しません。
電話、ファクス、コピー、電気のスイッチ、設備のスイッチなども徹底的に拭き上げます。塩素を使用できない場所は、アルコールなどを使用してとにかく綺麗にします。共用パソコンのキーボードなども拭き上げます。このように、手の触れる可能性のあるところをどれほど綺麗にするかが、工場のノロウイルス対策の分かれ目なのです。
下痢などの症状が出た場合
ノロウイルスにかかった場合は、病院で診察を受けて水分を十分に取って静養するしか対応はありません。ただし、家庭内感染を防ぐ必要があります。家庭にトイレが2つ以上ある家庭では、下痢の症状のある人とない人は使用するトイレを分けます。
嘔吐物でシーツ、タオルなどが汚れた場合は、洗濯機に入れる前に下洗いを行ってから洗濯機に入れ、ほかの洗濯物と区別して洗濯します。このとき、一度脱水まで終わってから、塩素系の漂白剤を入れて再度洗濯することが家庭内感染を防ぐのには有効です。
便や嘔吐物を処理する場合は、使い捨ての手袋を使用することが有効です。手袋がない場合でもビニール袋に手を入れて作業するなど、直接手を触れないようにすることが重要です。
ウイルスへの感染は予期していないときに訪れます。突然発生しても対応ができるように、ビニール袋、使い捨て手袋、ペーパータオル、塩素系洗剤などは常時備えておくようにしましょう。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)