昔から、よくそういわれてきましたが、これは単なる迷信ではないようです。最近の研究で、ニンジンに含まれるカロテノイドという色素が、加齢黄斑変性という目の難病を予防することがわかりました。
加齢黄斑変性は、加齢によって網膜の中心(黄斑)に障害が起こり、視野の中心がゆがんだり暗くなったりして見えづらくなる病気です。最悪の場合は失明に至りますが、残念ながら根本的な治療法はまだありません。
あまりなじみのない病名かもしれませんが、決して珍しい病気ではなく、欧米では視覚障害の原因の1位で、日本でも4位となっています。その患者数は、先進国を中心に年々増えており、日本では今後9年間で2倍に増加すると予想されています。
目は、カメラのような構造になっています。外からの光は、まず瞳孔(絞り)を通って目の中に入り、角膜と水晶体(レンズ)で屈折し、網膜(フィルム)上に映像が結ばれます。そして、網膜上の情報が視神経を通じて脳に伝えられることで、ものが“見える”のです。
黄斑は網膜の中心で、一番いい視力が得られる部分です。直径2ミリ、厚さ0.2ミリと小さいものの、非常に重要な役割を担っていて、黄斑がダメージを受けると視力が極端に悪くなり、場合によっては字を読むこともできなくなってしまいます。
カロテノイドの摂取により、発症リスクが40%低下
加齢黄斑変性を予防してくれるカロテノイドは、緑黄色野菜や果物などに含まれる天然色素で、ニンジンやかぼちゃのオレンジ色や黄色、トマトやスイカの赤色、ほうれん草やブロッコリーの緑色の色合いをつくり出しています。
カロテノイドは、およそ600種類あるとされていますが、一般的な野菜や果物に含まれているのは、ベータカロテンやルテインなどの6種類です。植物だけでなく、動物の体内にも存在しており、目の中では黄斑に集中しています。昨今、問題となっているパソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトを吸収したり、がんの元にもなる活性酸素を破壊したりして、目を守っているのです。
今回の研究は、米ハーバード大学のグループによるものです。50歳以上の男女約10万人を対象に、加齢黄斑変性とカロテノイドの関係を調査、米国の眼科誌「JAMA Ophthalmology」に結果が発表されました。
(※http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2448581)
同グループが約25年にわたるデータを調べたところ、10万人のうち約2.5%の人が加齢黄斑変性を発症していました。カロテノイドの摂取量と発症頻度の関係を見ると、最も摂取量の多かったグループでは、発症リスクが40%低下していたことが明らかになっています。