安倍政権、ゲノム編集食品の非表示を容認へ…安全性不明なまま、消費者団体の反対を無視
遺伝子組み換え食品やゲノム編集食品を生産しなければならないほど、食料が足りない状況であるなら、先に食品廃棄のことを考え、是正すべきでしょう。何しろ今現在、世界規模で考えると、全食料生産量のうちの30%以上を廃棄しているのです。こんなバカげたことをしながら、片方で食料生産量を上げるために、リスクを負ってゲノム編集食品を生産するというのが、果たして賢明な策なのでしょうか。
日本のことだけを考えても、先進国のなかでもっとも食料自給率が低い(カロリーベースで39%)にもかかわらず、食料廃棄率は世界一高いといわれ、その数値は国民一人当たりで、年間152キログラムにも及んでいるのです。
消費者庁がなぜ、この問題に真剣に取り組まないのかがわかりません。これが解決できたなら、多くの人たちがいろいろな意味で助かることは間違いないのにもかかわらず。
そしてこれは農林水産省の管轄になると思われますが、日本だけの年間の食料廃棄物の量は2800万トンに及びます。また、日本の農業生産量は米などの穀類、豆類、野菜、果物などすべて含めても2650万トンにすぎません。つまり日本は、自国での農業生産量より食料廃棄量のほうが勝っているという、まれにみる不思議な国なのです。ここを変えなければならないはずなのに、どうして農水省は言及しないのか、筆者にはわかりません。
消費者庁も農水省も、ゲノム編集食品を流通させることありきで、さまざまな施策を行っているようにしか見えないのです。それは、彼ら自らの意志には思えません。
どこかからの、何か特別な、逆らうことができないような圧力があっての行動なのではないかとさえ思えてしまいます。
消費者庁の矛盾する説明
これは環境省の問題になるのかもしれませんが、日本にあるゴミ焼却炉の数は1243基で、これは文句なしの世界第1位。2位のアメリカ(351基)を大きく引き離しています。ちなみに、3位はフランスで188基です。そこで燃やされているゴミの大半は廃棄される食料です。環境省はどうして、食料廃棄の問題を環境問題として捉えられないのでしょうか。わけがわかりません。
2018年に実施したゲノム編集食品に関する、消費者の意識調査(東京大学・内山正登研究員等)によれば、4~5割の消費者は「ゲノム編集食品を食べたくない」と回答しています。正直な気持ちでしょう。ほとんどの人は、安全かどうかもさることながら、わけのわからないものを食べたいとは思わないものです。
消費者庁は、消費者の側に立って物事を考えたり、施策を行ったりする集団ではないのだから、その呼び名を変えたほうが良いと筆者は思いますが、その消費者庁がゲノム編集食品の表示をしなくてよいと判断したことのひとつの要因として、ゲノム編集食品を規制していないアメリカからの輸入食品を原材料として事業者などが加工食品を製造した場合に、表示義務を課したとしても対応できないだろうから、と説明しています。
しかし、もしゲノム編集食品を認めないという立場であるなら、我が国はゲノム編集食品かどうか不明確な食品を輸入はできないと言えばいいだけです。ゲノム編集食品ではない食品は山ほどあります。それで、量的には十分なはずです。消費者庁が言っていることは、論として破綻しています。
さて、読者の皆さま、ゲノム編集食品に対する筆者の意見にご賛同をいただけましたでしょうか。ご賛同くださった方は、個人のレベルで、ゲノム編集を疑われる食品は購入しないという行動をとり、あらゆる機会にゲノム編集食品は食べたくないし、不必要であるという意思表明をし続けていただきたいと願う次第です。今を生きる私たち自身のためにも、そして未来の子供たちのためにも。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)