しかも、乾燥した唐辛子のカプサイシン含量は1%にも満たないので、現実的に唐辛子で自殺することは不可能です(食べすぎると、トイレの中で苦しみを味わうことになるかもしれませんが……)。
さて、カプサイシンの効果として「食べると身体が熱くなり、汗がだらだら出る」ということがあります。これは、「メントール入りのものを食べると、メントール自体は冷たくないのに、ヒヤリと感じる」という作用と同じ理屈で、食品の熱さとは関係ありません。
カプサイシンには、体内の「熱さを感じるスイッチ」をオンにする作用があるため、温度感覚が誤動作してしまうのです。その結果、食べた時に灼熱感があります。
唐辛子には長寿効果があった?
唐辛子の効能は完全に解明されているわけではありませんが、脳を刺激して副腎髄質ホルモンの一種であるアドレナリンの分泌を活発にします。
アドレナリンは全身にさまざまな作用があり、発汗を促進するほか、心拍数を上げたり、エネルギー源であるブドウ糖の血中濃度を上昇させたりします。その結果として、肥満を防ぐ、体内に有害な酸化物が蓄積することを防ぐ、炎症を抑える、抗がんなどの作用が報告されています。
北京大学やオックスフォード大学などの共同研究により、唐辛子が使用された辛い料理を日常的に食べる人は、そうでない人に比べて長生きする傾向があることが明らかになりました。これは、約50万の中国人を対象に、香辛料の摂取量と健康状態の相関関係を9年間にわたって追跡した結果です。
この研究によると、辛い料理を食べる頻度が毎週1回未満の人に比べて、週に1~2日の人は、死亡リスクが10%低下していました。この結果に男女差はなく、アルコールを好む人は長寿作用が相殺されることもわかりました。調査期間中に死亡した人の原因について見ると、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患が少なくなっており、以前からいわれていた唐辛子の長寿効果が再確認されたことになります。
そこで「唐辛子をたくさん食べて長生きしよう!」と行動に移すのは早計です。メキシコ国立公衆衛生研究所は、「ハラペーニョ(メキシコの青唐辛子)をたくさん食べると、胃がんを発症しやすい」と警告しています。
ただし、こちらは「ハラペーニョを毎日10~20本以上食べた場合」というのが条件です。無理をすれば食べられない量ではないかもしれませんが、唐辛子好きの私も、さすがにそれほどは食べません。