歯を1日2回磨くだけではだめ
わたしは3カ月に1回歯科で検診を受けている。虫歯の有無、歯周病の進行状態などもチェックしてもらうが、一番の目的は歯の清掃である。
毎日歯を磨いているという人は多い。統計を見ると1日に2回以上磨いている人は5割を超えている。かなり時間をかけてしっかり磨いているという人もいるはず。確かに虫歯は減ってきた。
しかし、虫歯は減ってきたが、歯を失う人はまだまだ多い。歯磨きというと、歯を白くきれいにすることだと思っている人も多いが、心がけるべきことはあくまでも清掃だ。
清掃の目的は、歯に付着している細菌を減らすこと。プラークや歯垢などといわれるが、これらは細菌の塊。そして、細菌によって、台所のシンクにあるバスケットにつくぬるぬるしたものと同じものが歯につくられる。
これを専門的にはバイオフィルムという。バイオフィルムとは、細菌がつくりだす膜で、この膜の内側で細菌たちが、ぬくぬくと数を増やしていく。バイオフィルムはこすってとらなければなくならない。口をすすぐ程度ではとれない。
バイオフィルムが歯の根元にできれば、虫歯菌だけでなくそこには歯周病菌も巣くうことになる。歯の清掃とは、このバイオフィルムを取り去ること。歯を磨く上では、歯の表面の細菌を完全にとることが重要なのである。
しっかり磨いても細菌が残っている
しかし、これがなかなか難しい。とくに歯と歯の間の汚れがとりにくい。わたしは歯ブラシで歯の汚れをとるだけでなく、歯間ブラシを使い、さらにフロスという細いナイロン製のひもを束ねたもので歯と歯の間の汚れをとっている。
これでも十分ではない。3カ月に一度のチェックでは、磨き残しの割合が今までで一番よかったときで8%、少々手を抜いたなというときは15%ぐらいまで増えてくる。それだけ歯の清掃ができていないというわけだ。
そこで、登場するのが専門家である。歯の徹底的な清掃をお願いする。これが前回紹介したPMTCである。プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略だが、プロは歯科衛生士(歯科医も含む)、メカニカルは機械的、トゥースは歯、クリーニングは清掃を意味する。歯科衛生士がなぜここで登場するかというと、歯科衛生士の仕事のなかに、歯科の予防処置という項目がある。虫歯や歯周病などを予防するために、薬物の塗布や歯のクリーニングをはじめとする予防処置を行うというものだ。これは歯科衛生士法の第2条に明記されている。