食品添加物の乳化剤は、「乳化」という言葉から消費者が安心感を抱きそうですが、実態は合成洗剤みたいなものです。乳化とは、水と油脂のような混じり合わないものを混ぜて乳化液(牛乳状)にすることです。化粧品にもよく使用されています。
食品において乳化剤は乳化作用以外に起泡剤、消泡剤、離型剤(パンなどを型から取り出しやすくする、焼きあがったちくわを抜けやすくする)、分散剤、洗浄剤などとして使用されています。また、パンなどある程度の量の水分とデンプンを含む食品においては、デンプンの老化防止剤として使用されています。ちなみにデンプンの老化とは、炊いた米飯や焼いたパンを放置しておくと食感が悪くなり味が落ちる現象で、デンプンと水分を多く含む食品で起こります。冷蔵庫に入れると老化が促進され、せんべいやクッキーなど水分の少ない食品では老化は起こりません。
合成乳化剤のひとつに、グリセリン脂肪酸エステルというものがあります。
グリセリンに脂肪酸が3つ結合したものは菜種油、バター、皮下脂肪などのいわゆる中性脂肪です。グリセリンに脂肪酸が1つ結合したものが、グリセリンモノ脂肪酸エステルです。「モノ」とは「1つの」という意味で、「モノグリセリド」「モノグリ」などと称されます。法令でグリセリン脂肪酸エステルという名称の使用が許されているものは、以下が挙げられます。
・グリセリンモノ脂肪酸エステル
生クリーム、マーガリン、コーヒー用クリーム、チョコレート、ケーキ、パン(老化防止のため)、アイスクリーム、チューインガム、など。
・酢酸モノグリセリド
チューインガム、油脂の改良など。
・乳酸モノグリセリド
他の乳化剤と併用しケーキ、クリームなど。
・クエン酸モノグリセリド
ドレッシング、マーガリン、マヨネーズなど。
・ジアセチル酒石酸モノグリセリド
ドレッシング、パン(生地の改良)、ケーキ、マーガリンなど。
・コハク酸モノグリセリド
・グリセリン酢酸エステル
・ポリグリセリンエステル
アイスクリーム、洋菓子、パン、ショートニング、マーガリン、豆腐、チョコレート、乳製品など。
・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
チョコレート、ファットスプレッドなど。
乳化剤は、私たちが普段口にするさまざまな食品に使用されているということを、どうか知っていただきたいと思います。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)