私はタイやメキシコでトレーニングをすることもあるのですが、向こうの空気は“匂い”があるというか、明らかに空気が悪いです。しかし、東京ではそのような“匂い”を感じることはありませんし、個人的にはそこまで神経質になる必要はないと考えています。
それでも『排気ガスが気になる』という方には、登山をお勧めします。高尾山など都心から近い場所にも気軽に登れる山がありますし、起伏があるので歩くだけでも十分トレーニングになります。競技ランナーが故障した際、登山でリハビリしてパフォーマンスを向上させた例も多くあります。山頂に近づくにつれ、空気もきれいになっていきますから気持ちいいですよ」(同)
重要なのは「自己管理」と「素直な気持ち」
野木氏はトレーナーとしての立場から、皇居ランナーには排気ガス以上に気をつけてほしいことがあるという。
「タイムなど、目標を設定してランニングする方が多いと思いますが、それに縛られて無理をしてしまうことが何より問題です。競技の選手は、無理と感じてもそこでもうひと踏ん張りしなくてはパフォーマンスの向上につながりませんが、一般ランナーの方は体に無理をさせる必要はありません。かたくなに走ることにこだわらず、キツいと感じたらウォーキングに切り替えたり、どこか近くで休むようにしましょう。
ランニングは、継続することが大事です。苦しい思いをしてまで走っていたら長くは続かないし、それこそ健康を害してしまいます。続ければ必ず効果は出ますので、焦りは禁物です。特に夏場は紫外線も強く、皇居周辺は木陰も少ないので、無理をして熱中症で倒れたら命にも危険が及びます」(同)
確かに排気ガスによる健康被害以上に、熱中症や脱水症状で体調を崩してしまう人のほうが報告例は多いようだ。そもそも、「健康のために」と走り始める人が大多数のはずだ。
「皇居周辺は荷物置き場やシャワーなどの『ランナーズスポット』も充実していて、場所柄警備体制もしっかりしていて治安もよく、安全にランニングを楽しめる素晴らしい場所です。空気が悪いことなどにとらわれてしまうと、極論『何もしないことが健康にいい』という結論に達してしまうのではないでしょうか。
それよりも『今日も走ろう』という目標に向かう気持ちが精神作用として健康面に与える影響は大きいと思います。気持ちよく走りたいという欲求を大切にして、それに素直になったほうが幸せなのではないでしょうか。『走りたい』と思う気持ちを大事にして、無理をせず楽しく走っていただきたいです」(同)
「病は気から」という言葉にもあるように、心の持ちようが健康にも大きく作用することは科学的にも立証されている。ストレスの多い社会、ランニングするときだけでも環境を気にせず、素直に楽しむことが健康につながるのではないだろうか。
(文=長谷英史/A4studio)