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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

チョコレートを食べると危険?性的刺激関連物質を含有?

文=中西貴之/宇部興産株式会社 環境安全部製品安全グループ 主席部員

 時代は高度経済成長が終わりを告げ、第一次オイルショックを迎える直前の頃。当時の小中高生の関心を集めたことが、バレンタインデーの定着につながったようです。なお、前述の句は以下のようなものです。

「ヴァレンタインデー学僧の眉澄むに遭ふ きくの」

 自由奔放な生涯を送った明治生まれの女流俳人・稲垣きくのは、常に燃え上がるような恋をし続けた自分と、世俗を離れた学生の清らかな目を対比させてこの句を詠みました。

チョコの絶妙な口溶けの秘密

 さて、話は化学に戻りますが、「物質の三態」というものをご存じでしょうか。水は0度に冷やすと固体の氷になり、100度に温めると気体の水蒸気になります。このように、あらゆる物質は温度が上昇するにつれて固体から液体、そして気体へと変化します。

 この固体、液体、気体の3つの状態が、物質の三態です。チョコについて物質の三態を調べてみると、非常に絶妙な温度で変化することがわかります。

チョコレートを食べると危険?性的刺激関連物質を含有?の画像3物質の三態……チョコレートの場合(作成=筆者)

 チョコと同じ植物油脂食品の代表のバターと比べると、違いがわかりやすいでしょう。実は、室温のバターは、化学的にはすでに溶けた状態にあります。ただ、放置していてもドロドロと流れ出さないのは、20%ほど残る固体部分が骨格の役割を果たし、液体部分をからめ取っているからです。一方、キャラメルは温度が変化しても、それだけでは簡単に溶けません。

 しかし、チョコは室温ではしっかりと固いのに、ちょうど口の中の温度付近で急激に液体に変化します。その他の食品にはない、この独特の変化が、チョコのまろやかな口溶けを実現し、老若男女を魅了する食感を生み出すのです。

 ただし、市販のチョコを溶かして型で固めた経験のある人はご存じの通り、この絶妙な口溶けをつくり出すのは簡単ではありません。溶けたチョコを固める方法がポイントで、コツは温度と時間の調節にあるようです。そのため、チョコの製造会社では自動で温度をコントロールする装置なども導入されていますが、古代メキシコで誕生した飲み物は2000年の時を超えて、意外なほどハイテクで管理される食べ物に進化しているのです。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 環境安全部製品安全グループ 主席部員)

【参考資料】
食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』(技術評論社/中西貴之)

早稲田社会科学総合研究 第5巻第1号(2004年7月)「季語になった外来語」

中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部

中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部

宇部興産品質保証部に勤務するかたわら、サイエンスコミュニケーターとしてさまざまな科学現象についてわかりやすく解説

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